抗酸化物質+L-カルニチン+セレコキシブはがん性悪液質を改善する
抗酸化物質+L-カルニチン+セレコキシブはがん性悪液質を改善する
がん関連の食欲不振および悪液質を示す患者に対するカルニチン+セレコキシブ±酢酸メゲストロールの併用療法のランダム化第3相臨床試験
Clin Nutr 31(2):
176-82, 2012
【要旨】
研究の背景と目的:がん関連の食欲不振と悪液質(cancer-related
anorexia/cachexia syndrome)の治療におけるカルニチン+セレコキシブ±酢酸メゲストロールの2剤併用(天然成分の抗酸化物質を含む)の効果を比較する第3相ランダム化非劣性試験を行った。主要評価項目(primary endpoint)は除脂肪体重(lean body mass)の増加と総身体活動の改善で、副次エンドポイント(secondary endpoint)は握力と6分歩行試験の評価による体力の増加で評価した。
方法:60例のがん患者を第1群(L-カルニチン4g/日+セレコキシブ300mg/日)と第2群(L-カルニチン4g/日+セレコキシブ300mg/日+酢酸メゲストロール320mg/日)の2群にランダムに2つのグループに分けた。
すべての患者はポリフェノール(300mg/日)、αリポ酸(300mg/日)、カルボシステイン(2.7g/日)、ビタミンE,A,Cを組み合わせた抗酸化物質を基礎治療として投与した。治療期間は4ヶ月で、症例数は60例であった。
結果:主要および副次エンドポイントの両方において、2群の間に有意な差は認めなかった。除脂肪体重(二重エネルギーX線吸収測定法とCTで評価)と6分間歩行テストによって評価した体力は両群とも著明に増加した。副作用はきわめて軽微で無視できるレベルで両群に差は認めなかった。
結論:第1群の2剤併用(L-カルニチン+セレコキシブ)は酢酸メゲストロールを追加した第2群(L-カルニチン+セレコキシブ+酢酸メゲストロール)と比較して、効果の劣性を認めなかった(効果は同等)。
したがって、酢酸メゲストロールを追加しなくても、抗酸化物質とL-カルニチンとセレコキシブの併用による治療は、安全で安価で費用対効果の高い実施しやすい治療法として、がん性悪液質に治療に有効であることが示唆された。
【訳者注】
がん性悪液質は炎症性サイトカインや酸化ストレスの増大によって発生するので、抗炎症作用や抗酸化作用が有効であることが知られています。脂肪酸のミトコンドリアへの運搬に必要なL-カルニチンが、がん性悪液質状態のエネルギー産生を改善し体重を増やすことが報告されています。
シクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害剤のセレコキシブ(celecoxib:商品名はセレブレックス、セレコックス)は抗炎症作用によって悪液質を改善することが報告されています。さらに、卵巣ホルモン製剤の酢酸メゲストロールも食欲を増進し体重を増やす効果が知られています。
この臨床試験では、抗酸化物質のサプリメントをベースにしてL-カルニチンとセレコキシブを併用した治療法に、酢酸メゲステロールを追加して効果が高まるかどうか比較しています。その結果、酢酸メゲストロールを追加しても効果に差は認めなかったということです。
酢酸メゲストロールを追加しなくても効果が同じであるので、抗酸化物質+L-カルニチン+セレコキシブで十分に効果が期待できるということになります。がん性悪液質の治療法を決める際、費用対効果の観点から参考になる研究結果だと思います。
がん性悪液質の改善にはサリドマイドやω3不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)も極めて効果が高いので、抗酸化性サプリメント(ポリフェノールやαリポ酸など)にL-カルニチン、セレコキシブ(商品名;セレコックス)、DHAやEPA、サリドマイドなどを併用する治療はがん性悪液質の治療に効果が期待できると思います。
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