ケトン食はアディポネクチンの産生を増やす

f-gtc (2012年12月31日 08:28)

ケトン食はアディポネクチンの産生を増やす

肥満した小児および青年における低カロリー食と比較したケトン食の代謝に対する影響Metabolic impact of a ketogenic diet compared to a hypocaloric diet in obese children and adolescents.J Pediatr Endocrinol Metab. 2012;25(7-8):697-704.

【要約】

背景:小児における代謝パラメーターに対する糖質制限食(ケトン食)の影響は十分に検討されていない。

目的:肥満している小児と青年におけるケトン食と低カロリー食の有効性と代謝に対する影響を比較する。

対象:58人の肥満者をケトン食と低カロリー食のどちらかに振り分けて6ヶ月間の食事療法を行った。

方法:食事療法の開始前と終了時(6ヶ月後)において、身体測定値(Anthropometric measurements)、身体成分(body composition)、経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose/insulin tolerance test)、血清脂質の値(lipidemic profile)、高分子量アディポネクチン値、インスリン抵抗性を評価するwhole-body insulin sensitivity index (WBISI) homeostatic model assessment-insulin resistance (HOMA-IR)の測定と評価を行った。

結果:低カロリー食とケトン食の両方のグループにおいて体重、体脂肪量、腹囲、空腹時インスリン値、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)の著明な減少あるいは低下を認めた(ケトン食はp=0.009、低カロリー食はp=0.014)。しかし、効果はケトン食の方が高かった。
両グループともインスリン感受性(WBISI)は統計的有意に上昇したが、高分子量アディポネクチンの増加を認めたのはケトン食のグループだけであった(p=0.025)。

結論:ケトン食療法は、体重の減量や代謝数値の改善において低カロリー食よりも効果が高く、肥満小児の体重減量の治療法として、安全で実施可能な食事療法であることが明らかになった。


(訳者注)

この研究で最も注目すべき点は、高分子量アディポネクチンの値が、低カロリー食では有意な上昇を認めず、ケトン食でのみ増加が認められた点です。

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンのような蛋白質で、肝臓や筋肉細胞のアディポネクチン受容体に作用してAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、インスリン抵抗性を改善し、動脈硬化や糖尿病を防ぐ作用があります。さらに、がん細胞におけるAMPKの活性化は様々な抗がん作用を発揮します。
百歳を超えるような超高齢者ではアディポネクチンの産生量が高く、これが長寿とがん発生率の低下に関与している可能性が指摘されています。がんの発生率や罹患率やがんによる死亡率は80歳代をピークにして、90歳代以降は急激に減少することが明らかになっていますが、その理由の一つとして、超高齢者では体脂肪が減少し、アディポネクチンの産生が高くなっていることが関与している可能性が指摘されています。

アディポネクチンは血中に1分子ずつバラバラにではなく、複数個がくっついた形で存在しています。低分子量(3量体)、中分子量(6量体)、高分子量(1218量体)です。中でも高分子量アディポネクチンが生理活性が強いことが知られていますので、活性の高い高分子量のアディポネクチンの値がケトン食で増加したことは、ケトン食が寿命の延長やがんの予防に効果があることを示唆しています。

また、アディポネクチンには、がん細胞の増殖や転移の抑制など様々な抗がん作用があることが報告されています。人の胃がん細胞を移植したマウスにアディポネクチンを注射すると、がんが著しく縮小したという報告があります。

また、ラットを使った実験で、ケトン食が、脂肪組織におけるアディポネクチンmRNAの量を増やすことが報告されています(J Clin Neurosci. 2010 Jul;17(7):899-904. 

ケトン食は、がん細胞へのブドウ糖(グルコース)の供給を減らし、さらにインスリンやインスリン様成長因子の産生を減らすことによって増殖シグナルを低下させるメカニズムなどによって抗がん作用を発揮します。さらに、ケトン食が寿命延長作用と抗がん作用のある高分子量アディポネクチンの産生を増やすという臨床試験の結果は、ケトン食の抗がん作用をさらに支持することになります。

 

【原文】

J Pediatr Endocrinol Metab. 2012;25(7-8):697-704.

Metabolic impact of a ketogenic diet compared to a hypocaloric diet in obese children and adolescents.

Partsalaki IKarvela ASpiliotis BE.

Source

Research Laboratory of the Division of Pediatric Endocrinology and Diabetes, Department of Pediatrics, University of Patras School of Medicine, Patras, Achaea, Greece.

Abstract

BACKGROUND:

The effects of carbohydrate-restricted (ketogenic) diets on metabolic parameters in children have been incompletely assessed.

OBJECTIVE:

To compare the efficacy and metabolic impact of ketogenic and hypocaloric diets in obese children and adolescents.

SUBJECTS:

Fifty-eight obese subjects were placed on one of the two diets for 6 months.

METHODS:

Anthropometric measurements, body composition, oral glucose/insulin tolerance test, lipidemic profile, high molecular weight (HMW) adiponectin, whole-body insulin sensitivity index (WBISI), and homeostatic model assessment-insulin resistance (HOMA-IR) were determined before and after each diet.

RESULTS:

Both groups significantly reduced their weight, fat mass, waist circumference, fasting insulin, and HOMA-IR (p = 0.009 for ketogenic and p = 0.014 for hypocaloric), but the differences were greater in the ketogenic group. Both groups increased WBISI significantly, but only the ketogenic group increased HMW adiponectin significantly (p = 0.025).

CONCLUSIONS:

The ketogenic diet revealed more pronounced improvements in weight loss and metabolic parameters than the hypocaloric diet and may be a feasible and safe alternative for children's weight loss.

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