フェノフィブラートはグリオブラストーマ細胞のアポトーシスを誘導する

f-gtc (2013年3月 7日 15:56)

フェノフィブラートはグリオブラストーマ細胞のアポトーシスを誘導する

Fenofibrate-induced nuclear translocation of FoxO3A triggers Bim-mediated apoptosis in glioblastoma cells in vitro.(培養したグリオブラストーマ細胞におけるフェノフィブレラートによって誘導されるFoxO3Aの核内移行はBimを介するアポトーシスを引き起こす)

Cell Cycle. 11(14):2660-71.2012

米国のルイジアナ州立大学健康科学センター(Louisiana State University Health Sciences Center)の神経腫瘍研究部門(Neurological Cancer Research)からの報告です。

【要旨】

カロリー制限あるいはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptors:PPARs)のリガンド誘導性の活性化による抗腫瘍活性については多くの研究で示されている。しかしながら、その作用機序については十分に解明されていない。PPARα(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)の強力なアゴニスト(受容体分子に結合して本来の伝達物質やホルモンと同様の作用を示す物質)の一つであるフェノフィブラート(fenofibrate)は、副作用の少ない抗高脂血症薬として広く使用されている。

フェノフィブラートによって活性化されるPPARα転写活性は、エネルギー代謝をグルコースの解糖系から脂肪酸のβ酸化へとシフトさせることが予想され、これは解糖系に依存性の高いグリオブラストーマ細胞のエネルギー代謝の弱点をターゲットにすることができる。

本研究の結果は、グリオーマ(神経膠腫)細胞やグリオブラストーマ(神経膠芽腫)細胞の増殖を25μMのフェノフィブラートが効果的に抑制することを示している。この細胞増殖抑制作用は細胞周期のG1期での停止と少数のアポトーシスによる細胞死によって起こっていた。25μMのフェノフィブラートで処理されたがん細胞は増殖を停止したままであったが、50μMの濃度でがん細胞を処理すると、72時間後に大量の細胞がアポトーシスによって死滅した。このアポトーシスの発現に先立って、転写因子FoxP3Aのセリン413のリン酸化が起こってFoxO3Aは核に移行し、その転写活性が亢進してFoxO3Aのターゲット遺伝子であるBim の発現を亢進する。Bimの発現亢進は細胞のアポトーシスを引き起こす。この時、FoxO3Aの活性をsiRNAで阻害すると、フェノフィブラートで引き起こされるアポトーシスは阻止される。つまり、フェノフィブラートで誘導されるグリオブラストーマのアポトーシスはFoxO3Aの活性化が直接関与していることが示された。

フェノフィブラートのこのような抗腫瘍作用と、副作用の少ない薬であることから、グリオブラストーマなどの神経膠細胞の腫瘍に対する標準治療をサポートする薬の候補になるかもしれない。

 

【訳者注】

グリオブラストーマ(神経膠芽腫)はヒトの悪性腫瘍の中で最も予後不良の腫瘍の一つです。手術や放射線治療や抗がん剤治療などが行われますが、このような集学的治療をおこなっても平均生存期間は1214カ月程度であり,治療成績はここ30年以上変化がないと言われています。

このグリオブラストーマに対してフィブラート系の高脂血症治療薬のフェノフィブラートが抗腫瘍効果を示すという実験結果を報告しています。

フェノフィブラートは本来のPPARαを介した機序と、それとは関係ない機序によって抗腫瘍効果を示しました。

Bimはがん細胞のミトコンドリアに作用してアポトーシスを誘導するタンパク質で、転写因子のFoxO3Aによって発現が誘導されます。フェノフィブラートはFoxO3Aを活性化してBimの発現を誘導してグリオブラストーマ細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導を引き起こすことが報告されています。

 

【原文】 

Cell Cycle. 2012 Jul 15;11(14):2660-71. doi: 10.4161/cc.21015. Epub 2012 Jul 15.

Fenofibrate-induced nuclear translocation of FoxO3A triggers Bim-mediated apoptosis in glioblastoma cells in vitro.

Wilk A, Urbanska K, Grabacka M, Mullinax J, Marcinkiewicz C, Impastato D, Estrada JJ, Reiss K.

Source

Neurological Cancer Research, Louisiana State University Health Sciences Center, New Orleans, LA, USA.

Abstract

Anti-neoplastic potential of calorie restriction or ligand-induced activation of peroxisome proliferator activated receptors (PPARs) has been demonstrated in multiple studies; however, mechanism(s) by which tumor cells respond to these stimuli remain to be elucidated. One of the potent agonists of PPARα, fenofibrate, is a commonly used lipid-lowering drug with low systemic toxicity. Fenofibrate-induced PPARα transcriptional activity is expected to shift energy metabolism from glycolysis to fatty acid β-oxidation, which in the long-term, could target weak metabolic points of glycolysis-dependent glioblastoma cells. The results of this study demonstrate that 25 μM fenofibrate can effectively repress malignant growth of primary glial tumor cells and glioblastoma cell lines. This cytostatic action involves G(1) arrest accompanied by only a marginal level of apoptotic cell death. Although the cells treated with 25 μM fenofibrate remain arrested, the cells treated with 50 μM fenofibrate undergo massive apoptosis, which starts after 72 h of the treatment. This delayed apoptotic event was preceded by FoxO3A nuclear accumulation, FoxO3A phosphorylation on serine residue 413, its elevated transcriptional activity and expression of FoxO-dependent apoptotic protein, Bim. siRNA-mediated inhibition of FoxO3A attenuated fenofibrate-induced apoptosis, indicating a direct involvement of this transcription factor in the fenofibrate action against glioblastoma. These properties of fenofibrate, coupled with its low systemic toxicity, make it a good candidate in support of conventional therapies against glial tumors.

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