トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

f-gtc (2017年10月 1日 07:15)

トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.(薬理学的用量の2-デオキシ-D-グルコースとメトホルミンによる乳がん細胞の併用投与:がん細胞の飢餓)Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424.

【要旨】
がん細胞のエネルギー産生の特徴は好気性解糖である。従って、解糖系の阻害はがん細胞に選択的な治療法となる。
解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコース(2DGは、多くのがん細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されている。さらに、糖尿病治療薬のメトホルミンの抗腫瘍活性が実証されている。
本研究では、2DGとメトホルミンの薬理学的用量の組み合わせが抗腫瘍効果を高めるかどうかを確認することを目的とした。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞のMDA-MB-231およびHCC1806細胞を用いて、2DGとメトホルミンのそれぞれ単独の投与と併用投与の場合の細胞生存率を測定した。
アポトーシスの誘導は、ミトコンドリア膜電位の低下およびPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の切断の測定によって定量した。
2DG
またはメトホルミンによる乳がん細胞の治療は、細胞生存率の有意な低下およびアポトーシスの増加をもたらした。
2DG
とメトホルミンを同時に投与すると、それぞれ単一で投与した場合と比較して、生存率が有意に低下した。この生存率の低下は、アポトーシスの誘導によるものであった。
さらに、アポトーシス誘導に関しては、単剤で投与した場合と比較して、併用投与はより強い誘導効果を示した。
ヒト乳がん細胞の解糖系亢進は治療のターゲットになりうる。解糖系阻害剤の2DGおよび糖尿病治療薬のメトホルミンの併用投与は副作用が少なく、乳がんに対する適切な治療法になるかもしれない。

解説:
トリプルネガティブ乳がんに対してメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が抗腫瘍効果を高めることは他にも多数の論文があり、最近増えています。がん細胞では解糖系が亢進しているので、メトホルミンだけでは抗腫瘍効果が十分に得られないことが分ってきたからです。
メトホルミンをがん治療に使うときには、がん細胞の解糖系を阻害する方法を併用することが重要と言えます。
トリプルネガティブ乳がん細胞では、特に解糖系が亢進していることが報告されています。したがって、トリプルネガティブ乳がん細胞ではメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用は有用です。

 

トリプルネガティブ乳がん細胞の補完・代替医療については以下のサイトで解説しています。

http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html

 

【原文】

Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424. doi: 10.3892/or.2017.5491. Epub 2017 Mar 6.

Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.

Wokoun U1, Hellriegel M1, Emons G1, Gründker C1.

 

Abstract

A characteristic of tumor cells is the increased aerobic glycolysis for energy production. Thus, inhibition of glycolysis represents a selective therapeutic option. It has been shown that glycolysis inhibitor 2-deoxy-D-glucose (2DG) induces apoptotic cell death in different tumor entities. In addition, the antitumor activity of the anti-diabetic drug metformin has been demonstrated. In the present study, we aimed to ascertain whether the combination of pharmacologic doses of 2DG with metformin increases the antitumor efficacy. Cell viability of MDA-MB-231 and HCC1806 triple-negative breast cancer (TNBC) cells treated without or with 2DG or with metformin alone or with the combination of both agents was measured using Alamar Blue assay. Induction of apoptosis was quantified by measurement of the loss of mitochondrial membrane potential and cleavage of PARP. Treatment of breast cancer cells with glycolysis inhibitor 2DG or with the anti-diabetic drug metformin resulted in a significant decrease in cell viability and an increase in apoptosis. Treatment with 2DG in combination with metformin resulted in significantly reduced viability compared with the single agent treatments. The observed reduction in viability was due to induction of apoptosis. In addition, in regards to apoptosis induction a stronger effect in the case of co-treatment compared with single agent treatments was observed. The glycolytic phenotype of human breast cancer cells can be targeted for therapeutic intervention. Co-treatment with doses of the glycolysis inhibitor 2DG and anti-diabetic drug metformin is tolerable in humans and may be a suitable therapy for human breast cancers.

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