メトホルミンの最近のブログ記事
ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する
ジクロロ酢酸とメトホルミンはがん細胞の増殖を相乗的に抑制する
Dichloroacetate and metformin synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells.(ジクロロ酢酸とメトホルミンは卵巣がん細胞の増殖を相乗的に抑制する)Oncotarget. 2016 Sep 13;7(37):59458-59470.
【要旨】
ジクロロ酢酸とメトホルミンはいずれも、がん細胞の代謝を制御することによって有望な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、ジクロロ酢酸は細胞保護的なオートファジーを誘導し、メトホルミンは乳酸蓄積を引き起こす作用によって、その抗がん作用の可能性を制限している。
したがって、それぞれの欠点を克服することによって、それぞれの治療効果を高めることができる。
本研究では、ジクロロ酢酸とメトホルミンが、卵巣がん細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導において相乗的に効果を増強することを明らかにした。
興味深いことに、ジクロロ酢酸によって誘導されるMcl-1タンパクと細胞保護的オートファジーをメトホルミンは劇的に減弱し、メトホルミンによって引き起こされる過剰な乳酸蓄積とグルコース消費をジクロロ酢酸が著しく減弱した。
ヌードマウスを使った移植腫瘍の実験では、ジクロロ酢酸とメトホルミンは異種移植卵巣腫瘍の増殖を相乗的に抑制した。これらの結果は、ジクロロ酢酸とメトホルミンの併用は、卵巣がんの治療のための新しい戦略を開発する道を開くかもしれない。
メトホルミン(metformin)は、世界中で1億人以上の2型糖尿病患者に使われているビグアナイド系経口血糖降下剤です。糖尿病だけでなくがんの予防や治療の分野でも注目されており、がんの発生を予防する効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。
メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素複合体1(電子伝達複合体1)を阻害してATPの産生を減らし、そのためにAMP:ATP比が上昇するためにAMPKが活性化されます。つまり、メトホルミンはミトコンドリア毒であり、この毒を適量使うと血糖を低下させることができるというメカニズムです。
さて、その作用機序から、ミトコンドリアの呼吸酵素複合体をメトホルミンで阻害した状態でジクロロ酢酸でがん細胞のミトコンドリアの代謝を亢進すれば、がん細胞に比較的特異的に酸化ストレスを高めることができます。
上記のようなジクロロ酢酸とメトホルミンの相乗的な抗腫瘍効果については複数の論文報告があります。
体内で産生された乳酸は肝臓で糖新生に使われます。これをコリ回路と言います。メトホルミンは肝臓における糖新生を阻害するので、体内で乳酸蓄積を引き起こして乳酸アシドーシスの副作用が起こすリスクがあります。
がん組織では乳酸産生が亢進していますが、メトホルミンだけでは乳酸アシドーシスを引き起こすリスクを高めます。
ジクロロ酢酸は乳酸アシドーシスの治療に使われています。ミトコンドリアでの代謝を活性化して乳酸産生を抑えるためです。
したがって、がん治療の目的でメトホルミンを使用するとき、ジクロロ酢酸の併用は、抗腫瘍効果増強と副作用軽減の目的で、合理的な組合せと言えます。
原文:
Oncotarget.
2016 Sep 13; 7(37): 59458-59470.
Dichloroacetate and metformin
synergistically suppress the growth of ovarian cancer cells
Abstract
Both dichloroacetate (DCA) and metformin (Met) have shown promising
antitumor efficacy by regulating cancer cell metabolism. However, the
DCA-mediated protective autophagy and Met-induced lactate accumulation limit
their tumor-killing potential respectively. So overcoming the corresponding
shortages will improve their therapeutic effects. In the present study, we
found that DCA and Met synergistically inhibited the growth and enhanced the
apoptosis of ovarian cancer cells. Interestingly, we for the first time revealed
that Met sensitized DCA via dramatically attenuating DCA-induced Mcl-1 protein
and protective autophagy, while DCA sensitized Met through markedly alleviating
Met-induced excessive lactate accumulation and glucose consumption. The in
vivo experiments in nude mice also showed that DCA and Met synergistically
suppressed the growth of xenograft ovarian tumors. These results may pave a way
for developing novel strategies for the treatment of ovarian cancer based on
the combined use of DCA and Met.
トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効
トリプルネガティブ乳がんにメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が有効
Co-treatment of breast cancer cells with pharmacologic doses of
2-deoxy-D-glucose and metformin: Starving tumors.(薬理学的用量の2-デオキシ-D-グルコースとメトホルミンによる乳がん細胞の併用投与:がん細胞の飢餓)Oncol
Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424.
【要旨】
がん細胞のエネルギー産生の特徴は好気性解糖である。従って、解糖系の阻害はがん細胞に選択的な治療法となる。
解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコース(2DG)は、多くのがん細胞においてアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されている。さらに、糖尿病治療薬のメトホルミンの抗腫瘍活性が実証されている。
本研究では、2DGとメトホルミンの薬理学的用量の組み合わせが抗腫瘍効果を高めるかどうかを確認することを目的とした。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞のMDA-MB-231およびHCC1806細胞を用いて、2DGとメトホルミンのそれぞれ単独の投与と併用投与の場合の細胞生存率を測定した。
アポトーシスの誘導は、ミトコンドリア膜電位の低下およびPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)の切断の測定によって定量した。
2DGまたはメトホルミンによる乳がん細胞の治療は、細胞生存率の有意な低下およびアポトーシスの増加をもたらした。
2DGとメトホルミンを同時に投与すると、それぞれ単一で投与した場合と比較して、生存率が有意に低下した。この生存率の低下は、アポトーシスの誘導によるものであった。
さらに、アポトーシス誘導に関しては、単剤で投与した場合と比較して、併用投与はより強い誘導効果を示した。
ヒト乳がん細胞の解糖系亢進は治療のターゲットになりうる。解糖系阻害剤の2DGおよび糖尿病治療薬のメトホルミンの併用投与は副作用が少なく、乳がんに対する適切な治療法になるかもしれない。
解説:
トリプルネガティブ乳がんに対してメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用が抗腫瘍効果を高めることは他にも多数の論文があり、最近増えています。がん細胞では解糖系が亢進しているので、メトホルミンだけでは抗腫瘍効果が十分に得られないことが分ってきたからです。
メトホルミンをがん治療に使うときには、がん細胞の解糖系を阻害する方法を併用することが重要と言えます。
トリプルネガティブ乳がん細胞では、特に解糖系が亢進していることが報告されています。したがって、トリプルネガティブ乳がん細胞ではメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用は有用です。
トリプルネガティブ乳がん細胞の補完・代替医療については以下のサイトで解説しています。
http://www.f-gtc.or.jp/TNBC/Triple_Negative_Breast_Cancer.html
【原文】
Oncol Rep. 2017 Apr;37(4):2418-2424. doi: 10.3892/or.2017.5491. Epub 2017 Mar 6.
Co-treatment
of breast cancer cells with pharmacologic doses of 2-deoxy-D-glucose and
metformin: Starving tumors.
Wokoun U1, Hellriegel M1, Emons G1, Gründker C1.
Abstract
A
characteristic of tumor cells is the increased aerobic glycolysis for energy
production. Thus, inhibition of glycolysis represents a selective therapeutic
option. It has been shown that glycolysis inhibitor
2-deoxy-D-glucose (2DG) induces apoptotic cell death in different tumor
entities. In addition, the antitumor activity of the anti-diabetic drug
metformin has been demonstrated. In the present study, we aimed to ascertain
whether the combination of pharmacologic doses of 2DG with metformin increases
the antitumor efficacy. Cell viability of MDA-MB-231 and HCC1806
triple-negative breast cancer (TNBC) cells treated without or with 2DG or with
metformin alone or with the combination of both agents was measured using
Alamar Blue assay. Induction of apoptosis was quantified by measurement of the
loss of mitochondrial membrane potential and cleavage of PARP. Treatment of
breast cancer cells with glycolysis inhibitor 2DG or with the anti-diabetic
drug metformin resulted in a significant decrease in cell viability and an
increase in apoptosis. Treatment with 2DG in combination with metformin
resulted in significantly reduced viability compared with the single agent
treatments. The observed reduction in viability was due to induction of
apoptosis. In addition, in regards to apoptosis induction a stronger effect in
the case of co-treatment compared with single agent treatments was observed.
The glycolytic phenotype of human breast cancer cells can be targeted for
therapeutic intervention. Co-treatment with doses of the glycolysis inhibitor
2DG and anti-diabetic drug metformin is tolerable in humans and may be a
suitable therapy for human breast cancers.
ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある
ビタミンD3+メトホルミン+ケトン食が乳がんに効く可能性がある
Effects of Pre-surgical Vitamin D Supplementation and Ketogenic Diet in a Patient with Recurrent Breast Cancer.(再発乳がん患者における術前のビタミンD補充とケトン食の効果)Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5525-32.
【要旨】
研究の背景:19歳で出産した1児の母親である女性が、1985年(37歳)に右の乳がんと診断された。患者は腫瘍の摘出(乳房温存手術)とリンパ節廓清、放射線治療を受けた。
1999年に左乳房に乳がんが見つかり、切除と放射線治療が行われ、さらにホルモン療法(タモキシフェン)を6年間受けた。
2014年の3月に、1985年に手術と放射線治療を受けた乳腺の残存乳腺組織から浸潤性乳管がんが発見された。
症例報告:術前の生検による病理検査では、プロゲステロン受容体(PgR)の発現は少なく(<1%)、エストロゲン受容体(ER)は強陽性(90%)で、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)は陽性(>10%, score 2+)、増殖活性を示す核タンパク質Ki67は強陽性(30%)であった。
診断から手術まで3週間あり、その間の治療の計画が無かったので、患者は自分の判断で、ビタミンD3(1日10,000 IU)と厳格なケトン食を実施した。
結果:右乳房切除を行われた。切除組織の病理検査でHER2の発現は全く認めず(陰性、score 0)で、PgRの発現は亢進していた(20%)。ERとKi67の陽性度は変化なかった。
結論:この症例は、高用量のビタミンD3とケトン食の併用は、乳がん細胞のHER2発現を抑制し、プロゲステロン受容体の発現を亢進するなど、乳がん細胞の生物学的性状に影響を及ぼす可能性を示唆している。
これは1例の症例報告ですので、高用量のビタミンD3とケトン食の併用が乳がんに有効かどうかのエビデンスは低いのですが、高用量のビタミンD3とケトン食はそれぞれ乳がんに対する効果が報告されているので、この2つの治療の併用を試してみる価値はあるかもしれません。
また、ビタミンD3とメトホルミンの相乗効果は乳がんや前立腺がんや大腸がんなどで報告されています。メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。ビタミンD3はメトホルミンの抗腫瘍効果を高めます。次のような報告があります。
Synergistic antitumor activity of vitamin D3 combined with metformin in human breast carcinoma MDA-MB-231 cells involves m-TOR related signaling pathways. (ヒト乳がん細胞MDA-MB-231細胞におけるビタミンD3とメトホルミンの併用による相乗的な抗腫瘍効果はmTOR関連のシグナル伝達系が関与する)Pharmazie. 2015 Feb;70(2):117-22.
メトホルミンは2型糖尿病の治療に使用されていますが、最近の多くの研究によって、メトホルミンとビタミンDは多くのがん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが示されています。
この研究では、ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、ビタミンD3とメトホルミンの併用はアポトーシス誘導において相乗効果があることを報告しています。その抗腫瘍効果の発現にはmTOR関連のシグナル伝達系が関与することを報告しています。つまり、ビタミンD3とメトホルミンはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質)の活性を阻害することによってアポトーシスを誘導することを示しています。
前立腺がんや大腸がんでも同様の効果が報告されています。
Vitamin D3 potentiates the growth inhibitory
effects of metformin in DU145 human prostate cancer cells mediated by AMPK/mTOR
signalling pathway. (ヒト前立腺がん細胞DU145におけるAMPK/mTORシグナル伝達系を介するメトホルミンの増殖阻害作用をビタミンD3は増強する)Clin Exp Pharmacol Physiol. 2015
Jun;42(6):711-7.
前述のようにメトホルミンはAMPKを活性化してAkt/mTORシグナル伝達系を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。ビタミンD3はメトホルミンのAkt/mTORシグナル伝達系の抑制効果を増強して、アポトーシス誘導を亢進するという作用機序です。
Akt/mTORシグナル伝達系は、インスリンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)などの増殖因子や成長因子で活性化され、タンパク質や脂質の合成や、細胞分裂や細胞死や血管新生やエネルギー産生などに作用してがん細胞の増殖を促進します。
メトホルミンはAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、活性化してAMPKはmTORを抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制します。
Combined use of vitamin D3 and metformin
exhibits synergistic chemopreventive effects on colorectal neoplasia in rats
and mice. (ビタミンD3とメトホルミンの併用はラットとマウスの結腸直腸がんの発生に対して相乗的な化学予防効果を示す)Cancer Prev Res (Phila). 2015 Feb;8(2):139-48.
この研究はラットとマウスを用いた大腸発がん実験での検討です。メトホルミンは化学発がんモデルで大腸がんの発生を抑制する作用があります。ビタミンD3はメトホルミンの発がん抑制作用を増強するという結果です。そのメカニズムとして、mTOR活性の抑制を認めています。さらに、ビタミンD3にはビタミンD受容体/β-カテニンのシグナル伝達系に作用してβ-カテニンの働きを抑制することによってc-MycやサイクリンD1の発現を抑制する作用も指摘しています。
ビタミンD3とメトホルミンの併用は、相乗効果によって発がん抑制や抗腫瘍効果を高めることができるという結論です。
ケトン食もAMPKを活性化し、Akt/mTORシグナル伝達系を抑制します。したがって、ケトン食を実践しているとき、ビタミンD3とメトホルミンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができます。
進行した乳がんの代替医療として、高用量(1日4000〜10000国際単位)のビタミンD3とメトホルミン(1日1000〜1500mg程度)とケトン食の組合せは、相乗効果が期待できると考えられます。ビタミンD3もメトホルミンも安価ですので、試してみる価値は高いと言えます。
この組合せは乳がんだけでなく、大腸がんや膵臓がんや肺がんなど他のがんにも効果が期待できます。
メトホルミンは直腸がんの化学放射線療法の効き目を高める
メトホルミンは直腸がんの化学放射線療法の効き目を高める
Metformin use and improved response to therapy in
rectal cancer(メトホルミンは直腸がんの治療効果を高める)Cancer Med.
2(1): 99-107, 2013年
【要旨】
原発部位が進行している直腸がんの場合は、手術前に化学放射線治療(chemoradiation)を行って腫瘍を縮小させてから全直腸間膜切除術(TME;total mesorectal excision)を行うことが多い。
メトホルミンが直腸がんの化学予防剤として有効である可能性や、直腸がんの治療効果を高める可能性が今までの多くの研究によって示唆されている。
そこで、この研究では、直腸がんの化学放射線治療の病理学的完全奏功率(pathologic complete response rates)と予後に対するメトホルミンの効果を検討した。
局所進行した直腸腺がんで1996年から2009年の間に化学放射線療法と全直腸間膜切除術を受けた482例のカルテを検証した。
放射線照射量の中央値は50.4Gy(19.8〜63 Gy)で、98%の患者は5-FUをベースにした抗がん剤の同時投与を受け、81.3%は放射線治療後に抗がん剤治療を受けた。
422例は非糖尿病患者で、40例は糖尿病がありメトホルミンを服用していない患者で、20例は糖尿病があってメトホルミンを服用していた。
この3つのグループの間には、がんの臨床的分類や、リンパ節転移の状況、肛門からの腫瘍の距離、がんの深達度、診断時の腫瘍マーカー(CEA)の値、がん細胞の分化度において差を認めなかった。
病理学的完全奏功(pathologic complete response)の率は、非糖尿病患者が16.6%、メトホルミンの投与を受けていない糖尿病患者が7.5%、メトホルミンを服用している糖尿病患者が35%であった。
メトホルミンを服用している糖尿病の患者のグループは、非糖尿病のグループ(p=0.03)と糖尿病でメトホルミンを服用していないグループ(p=0.007)と比べて、統計的有意に化学放射線治療の病理学的完全奏功率が高かった。
メトホルミンの併用は、単変量解析(p=0.05)と多変量解析(p=0.01)の療法の解析で、病理学的完全奏功率と統計的有意に相関していた。
さらに、メトホルミンを服用している糖尿病患者では、メトホルミンを服用していない糖尿病患者に比べて、無再発生存期間(p=0.013)と全生存期間(p=0.008)が統計的有意に長かった。
メトホルミンの服用は、直腸がんの術前化学放射線治療の病理学的完全奏功率を高め、生存期間を延長する効果が認められた。さらに前向き研究によって、このメトホルミンの効果を検証する必要がある。
(訳者注)
この論文は、米国のテキサス大学MDアンダーソンがん研究所からの研究報告です。
局所進行した直腸がんの場合、手術で切除する前に放射線治療と5-FUベースの抗がん剤治療の併用によって腫瘍を縮小させてから摘出手術を行うことが欧米では標準治療となっており、手術単独の場合にくらべて優れた治療成績が報告されています。日本でも術前の化学放射線療法を併用する所が増えています。
手術前に化学放射線治療を行って、手術で切除したがん組織を病理で検査すると、生きたがん細胞が見つからない(がんが完全に死滅している)場合があり、これを病理学的完全奏功(pathological complete response)といいます。
病理学的完全奏功が認められた患者さんは、再発率が低く、予後が極めて良いとこが明らかになっています。したがって、手術前の化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤治療)の効果を高めるための抗がん剤の組み合わせの検討や、化学放射線療法の効き目を高める補助療法の検討が行われています。
この臨床試験は、過去に遡った後ろ向きの研究ですが、メトホルミンが直腸がんの化学放射線療法の効果を高めることが示されています。
通常、糖尿病があると、直腸がんや大腸がんの手術後の再発率が高くなることが、過去の疫学研究で示されています。さらに、直腸がんの術前化学放射線療法の効果も低いことが知られています。ある臨床試験では、直腸がんの術前化学放射線療法で病理学的完全奏功率が非糖尿病患者で23%に対して糖尿病患者では0%という結果が報告されています(Ann. Surg. Oncol. 2008;15:1931-1936)。
しかし、メトホルミンを服用している糖尿病患者は、メトホルミンを服用していない糖尿病患者だけでなく、糖尿病がない(したがってメトホルミンも服用していない)患者よりも、病理学的完全奏功の率が高かったという結果が得られており、メトホルミン自体に化学放射線療法の効果を高める作用を示唆しています。
直腸がんの術前化学放射線治療における病理学的完全奏功率は、今までの臨床試験では15%前後の数値が報告されています。この論文のデータでも非糖尿病のグループの病理学的完全奏功率は16.6%です。それに比べてメトホルミンを服用しているグループでは35%に増えています。
メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素を阻害してATP産生を阻害し、AMP依存性プロテインキナーゼを活性化する作用があり、その他にも複数の抗腫瘍効果が報告されています。
がん細胞のエネルギー産生を抑制することは抗がん剤や放射線の治療効果を高める方法として有効であることは十分に理解できると思います。
メトホルミンは糖尿病の治療薬ですが、インスリン感受性を高めてインスリンの分泌を減らす作用(少ないインスリン量で血糖をコントロールできるようにする作用)であるため、糖尿病がなくても服用できます。
最近は糖尿病が無いがん患者にメトホルミンを投与して抗がん剤の効き目を高めるを作用を認めたという報告もあります。
抗がん剤や放射線治療の補助療法としてメトホルミンの併用は有用と言えそうです。
◎ メトホルミンの抗がん作用については以下のサイトで解説しています。
http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html
(原文)
Cancer Med. 2013 Feb;2(1):99-107.
doi: 10.1002/cam4.54. Epub 2013 Feb 3.
Metformin use and improved response
to therapy in rectal cancer.
Skinner HD, Crane CH, Garrett CR, Eng C, Chang GJ, Skibber JM, Rodriguez-Bigas MA, Kelly P, Sandulache VC, Delclos ME, Krishnan S, Das P.
Author information
Abstract
Locally advanced rectal cancer is commonly treated with chemoradiation prior to total mesorectal excision (TME). Studies suggest that metformin may be an effective chemopreventive agent in this disease as well as a possible adjunct to current therapy. In this study, we examined the effect of metformin use on pathologic complete response (pCR) rates and outcomes in rectal cancer. The charts of 482 patients with locally advanced rectal adenocarcinoma treated from 1996 to 2009 with chemoradiation and TME were reviewed. Median radiation dose was 50.4 Gy (range 19.8-63). Nearly, all patients were treated with concurrent 5-fluorouracil-based chemotherapy (98%) followed by adjuvant chemotherapy (81.3%). Patients were categorized as nondiabetic (422), diabetic not taking metformin (40), or diabetic taking metformin (20). No significant differences between groups were found in clinical tumor classification, nodal classification, tumor distance from the anal verge or circumferential extent, pretreatment carcinoembryonic antigen level, or pathologic differentiation. pCR rates were 16.6% for nondiabetics, 7.5% for diabetics not using metformin, and 35% for diabetics taking metformin, with metformin users having significantly higher pCR rates than either nondiabetics (P = 0.03) or diabetics not using metformin (P = 0.007). Metformin use was significantly associated with pCR rate on univariate (P = 0.05) and multivariate (P = 0.01) analyses. Furthermore, patients taking metformin had significantly increased disease-free (P = 0.013) and overall survival (P = 0.008) compared with other diabetic patients. Metformin use is associated with significantly higher pCR rates as well as improved survival. These promising data warrant further prospective study.
メトホルミンは食道がんの化学放射線療法の効き目を高める
メトホルミンは食道がんの化学放射線療法の効き目を高める
メトホルミンは食道腺がんの治療効果を高める(Metformin use and improved response
to therapy in esophageal adenocarcinoma.)Acta Oncol. 2012 Sep 5. [Epub ahead
of print]
米国テキサス州のMDアンダーソンがんセンターの放射線腫瘍部門(Department of Radiation Oncology)からの報告
背景:術前化学放射線療法を受けた食道腺がん患者において、メトホルミンを服用していた場合の治療効果への影響を検討した。
方法:1997年から2012年の間に術前化学放射線療法を実施後に切除手術を行った285例の食道腺がん患者を対象にした。この中にはメトホルミンを服用している糖尿病患者が29例、メトホルミンを服用していない糖尿病患者が21例含まれ、残りの235例は糖尿病でなかった。
204例において化学放射線療法の前後でPET検査が行われた。病理学的な治療効果は手術の時点で評価した。
結果:全患者の病理学的な完全奏功率は20%であった。メトホルミンを服用しているグループの完全奏功率(34.5%)は、メトホルミンを服用していない糖尿病患者のグループの完全奏功率(4.8%, p = 0.01)と非糖尿病のグループの完全奏功率(19.6%, p = 0.05)と比べて統計的有意に高かった。
病理学的完全奏功率はメトホルミンの用量に依存し、1500mg/日以上の服用群でより高い完全奏功率を示した。
化学放射線療法におけるPET検査における取込みは、メトホルミンを服用している群で著明に低下した。
メトホルミン服用が病理学的完全奏功率と独立に相関していた。メトホルミン服用は放射線治療後の再発の低下とも関連していた。
結論:メトホルミンの併用は食道がんの化学放射線療法の治療効果を用量依存的に高め、化学放射線療法の感受性増強剤となる可能性が示唆された。
http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html
Acta Oncol. 2012 Sep 5. [Epub ahead of print]
Metformin use and improved response to
therapy in esophageal adenocarcinoma.
Skinner HD, McCurdy MR, Echeverria AE, Lin SH, Welsh JW, O'Reilly MS, Hofstetter WL, Ajani JA, Komaki R, Cox JD, Sandulache VC, Myers JN, Guerrero TM.
Source
Department of Radiation Oncology, The
University of Texas MD Anderson Cancer Center , Houston, Texas , USA .
Abstract
Background. We investigated the radiographic and pathologic response rate of esophageal adenocarcinoma treated with neoadjuvant chemoradiation in patients taking metformin. Material and methods. Two hundred eighty-five patients with esophageal adenocarcinoma treated with concurrent chemoradiation (CRT) followed by esophagectomy from 1997 to 2012 were included in the study, including 29 diabetics taking metformin, 21 diabetics not taking metformin and 235 non-diabetics. Pre- and post-treatment positron emission tomography (PET) scans were available for 204 patients. Pathologic response was graded at the time of surgery. Response rates were compared using both the χ(2) statistic as well as ANOVA with post-hoc LSD analysis. Multivariate logistic regression analysis was performed to control for predictors of pathologic complete response (CR) after CRT. Results. The overall rate of pathologic CR for the study population was 20%. The pathologic CR rate was higher in patients taking metformin (34.5%), compared to diabetic patients not taking metformin (4.8%, p = 0.01) and non-diabetic patients (19.6%, p = 0.05). Pathologic CR was related to metformin dose, with ≥1500 mg/d associated with a higher CR rate. No significant difference seen in pre-CRT maximum tumor SUV (p = 0.93), however post-CRT maximum SUV was significantly decreased in patients taking metformin (p = 0.05). On multivariate logistic regression, metformin use was independently associated with pathologic CR (p = 0.04). Metformin use was also associated with decreased in field loco-regional failure following radiation (p = 0.05). Conclusion. Metformin use is associated with a dose-dependent increased response to CRT in esophageal cancer and may be a sensitizer to this therapy.
メトホルミンは乳がんに対して抗がん作用を示す。
メトホルミンは乳がんに対して抗がん作用を示す。
早期乳がんにおけるメトホルミン:好機術前補助療法の前向き試験(Metformin in early breast cancer: a
prospective window of opportunity neoadjuvant study.)
Breast Cancer Res Treat. 135(3):821-30. 2012
【要旨】
メトホルミンはインスリン介在性(insulin-mediated)の直接作用あるいはインスリンとは関連しない(insulin-independent)間接作用によって抗がん作用を示す。我々は、手術可能な乳がん患者を対象に、手術前の限られた期間(window of opportunity)にメトホルミンを投与する術前化学療法の効果について検討した。
新たに診断された治療をまだ受けていない、糖尿病でない乳がん患者に、確定診断のための針生検の後から手術の直前までメトホルミンを1日1500mg(500mg x 3回/日)投与した。
臨床所見(体重、症状、生活の質)と血液検査(空腹時血清インスリン濃度、血糖値、インスリン抵抗性指数(homeostasis model assessment :HOMA)、C-反応性蛋白(CRP)、レプチン)はメトホルミン服用の前後で比較し、針生検で得たがん組織と摘出したがん組織のTUNEL染色(terminal deoxynucleotidyl
transferase-mediated dUTP nick end labeling :アポトーシスを検出する染色法)とKi67スコア(増殖のマーカー)についても同様に比較した。
39名の乳がん患者がこの研究に参加した。平均年齢は51歳で、メトホルミンを服用した期間は13日〜40日で中央値は18日であった。手術前日の夜間まで服用した。
51%はT1(大きさが2cm以下)で、38%でリンパ節転移を認め、85%はエストロゲン受容体あるいはプロゲステロン受容体が陽性で、13%はHER2の過剰発現を認めた。
中等度の自制できる吐き気(50%)、下痢(50%)、食欲不振(41%)、腹部膨満(32%)の副作用をそれぞれ括弧内の率で認めたが、生活の質(QOL)を評価するEORTC30-QLQ function scalesでは有意な低下は認めなかった。
ボディマス指数(BMI)(-0.5 kg/m2, p < 0.0001)と体重(-1.2 kg, p < 0.0001)とHOMA (-0.21, p = 0.047) は統計的有意に減少した。血中インスリン値(-4.7 pmol/L, p = 0.07)とレプチン (-1.3 ng/mL, p = 0.15) と CRP (-0.2 mg/L, p = 0.35)は減少傾向を認めたが統計的な有意差は認めなかった。 がん組織におけるKi67染色スコア(細胞増殖の割合)は 36.5 から 33.5 %(p = 0.016) に有意に減少し、 TUNEL 染色(アポトーシスを起こしている細胞)は0.56 から1.05( p = 0.004)に有意に増加した。手術前の短期間のメトホルミン投与は忍容性が高く、抗がん作用と一致する臨床所見とがん組織の変化を示した。生存期間のような臨床的エンドポイントを用いて適切な臨床試験を実施し、メトホルミンの抗がん作用に関する臨床的妥当性の評価が必要である。
解説:
この論文はカナダのトロント大学のマウント・サイナイ病院とプリンセス・マーガレット病院(Mount Sinai Hospital and Princess Margaret Hospital)の腫瘍血液内科部門(Division of Medical Oncology and Hematology)からの報告です。
タイトルにある「a prospective window of opportunity
neoadjuvant study」の「neoadjuvant」というのは術前化学療法のことで、「prospective study」は前向き試験のことです。windowというのは、この場合は「範囲、実行可能時間枠、限られた短い時間」を言う意味で、opportunityは「機会、好機」ということで「window of opportunity」は「限られた時間での治療の機会」という意味です。つまり、「乳がんの診断が確定してから実際に手術が行われるまでの限られた機会を利用して、メトホルミンの術前化学療法としての効果を評価する前向き試験」を行ったということです。
この研究では、メトホルミンを1日1500mg(1回500mgを3回)投与しています。投与期間は中央値が18日(13〜40日)と比較的短期間の投与ですが、臨床症状や血液検査で、抗がん作用を示唆する結果が得られています。
メトホルミンは2型糖尿病の治療薬ですが、インスリンの分泌を促進するのではなく、細胞のインスリン感受性を高める(インスリン抵抗性を改善する)作用なので、糖尿病でなくても血糖を下げ過ぎることは無いので、1日1500mgでも問題ないようです。
メトホルミンは様々ながんの発生率を低下させることが報告され、さらに抗がん剤治療や放射線治療の効き目を高めることが報告されています。さらに、メトホルミン自体に抗がん作用が報告されています。
大規模な臨床試験などで証明されるまではまだエビデンスは高いとは言えませんが、多くの研究はメトホルミンの抗がん作用を示しています。乳がんなどの治療にもっと使ってよいように思います。
http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html
【原文】
Breast Cancer
Res Treat. 2012
Oct;135(3):821-30. Epub 2012 Aug 30.
Metformin in early breast cancer: a
prospective window of opportunity neoadjuvant study.
Niraula S, Dowling RJ, Ennis M, Chang MC, Done SJ, Hood N, Escallon J, Leong WL, McCready DR, Reedijk M, Stambolic V, Goodwin PJ.
Source
Division of Medical Oncology and
Hematology, Department of Medicine, Mount Sinai Hospital and Princess Margaret
Hospital, University of Toronto, 1284-600 University Avenue, Toronto, ON, M5G
1X5, Canada.
Abstract
Metformin may exert anti-cancer effects
through indirect (insulin-mediated) or direct (insulin-independent) mechanisms.
We report results of a neoadjuvant "window of opportunity" study of
metformin in women with operable breast cancer. Newly diagnosed, untreated,
non-diabetic breast cancer patients received metformin 500 mg tid after
diagnostic core biopsy until definitive surgery. Clinical (weight, symptoms,
and quality of life) and blood [fasting serum insulin, glucose, homeostasis
model assessment (HOMA), C-reactive protein (CRP), and leptin] attributes were
compared pre- and post-metformin as were terminal deoxynucleotidyl
transferase-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL) and Ki67 scores (our
primary endpoint) in tumor tissue. Thirty-nine patients completed the study.
Mean age was 51 years, and metformin was administered for a median of
18 days (range 13-40) up to the evening prior to surgery. 51 % had T1
cancers, 38 % had positive nodes, 85 % had ER and/or PgR positive
tumors, and 13 % had HER2 overexpressing or amplified tumors. Mild,
self-limiting nausea, diarrhea, anorexia, and abdominal bloating were present
in 50, 50, 41, and 32 % of patients, respectively, but no significant
decreases were seen on the EORTC30-QLQ function scales. Body mass index (BMI)
(-0.5 kg/m(2), p < 0.0001), weight (-1.2 kg,
p < 0.0001), and HOMA (-0.21, p = 0.047) decreased
significantly while non-significant decreases were seen in insulin
(-4.7 pmol/L, p = 0.07), leptin (-1.3 ng/mL,
p = 0.15) and CRP (-0.2 mg/L, p = 0.35). Ki67 staining
in invasive tumor tissue decreased (from 36.5 to 33.5 %,
p = 0.016) and TUNEL staining increased (from 0.56 to 1.05,
p = 0.004). Short-term preoperative metformin was well tolerated and
resulted in clinical and cellular changes consistent with beneficial
anti-cancer effects; evaluation of the clinical relevance of these findings in
adequately powered clinical trials using clinical endpoints such as survival is
needed.
メトホルミンはがん幹細胞を死滅させる
メトホルミンはがん幹細胞を死滅させる
メトホルミンはがん細胞を死滅させ、放射線感受性を高め、がん幹細胞を優先的に死滅させる(Metformin
kills and radiosensitizes cancer cells and preferentially kills cancer stem
cells.)Sci
Rep. 2012;2:362. Epub 2012 Apr 12.
【要旨】
2型糖尿病の治療に広く使用されているメトホルミンの単独での抗がん作用あるいは放射線治療との併用による抗がん作用をヒト乳がん細胞MCF-7とマウス線維肉腫細胞FSallの2種類のがん細胞を用いて検討した。
人間の臨床的に達しうる血中濃度において、メトホルミンはがん細胞のクローン形成性細胞死(clonogenic
death:がん細胞が増殖してコロニーを形成できなくなること)を引き起こした。重要な点は、メトホルミンは非幹性がん細胞(non-cancer stem cell)に比べて、がん幹細胞(cancer stem
cell)に対して殺細胞作用を強く示した。
培養細胞の実験系において、メトホルミンはがん細胞の放射線感受性を高めた。さらに、C3Hマウスの下肢に移植したマウス線維肉腫細胞FSallの放射線照射による増殖抑制を著明に増強した。
メトホルミンと放射線照射は、培養細胞(in vitro)と動物移植腫瘍(in vivo)の実験系で、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質: mammalian target of rapamycin)の活性を阻害し、S6K1や4EBP1のようなmTORの下流に位置するがん細胞の増殖や生存に重要なシグナル伝達因子の活性を抑制した。
結論:メトホルミンはAMPKを活性化し、mTORを抑制することによって、がん細胞を死滅させ、がん細胞の放射線感受性を高め、さらに放射線抵抗性のがん幹細胞を根絶する。
http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html
【原文】
Sci
Rep. 2012;2:362. Epub 2012 Apr 12.
Metformin kills and
radiosensitizes cancer cells and preferentially kills cancer stem cells.
Song CW, Lee H, Dings RP, Williams
B, Powers J, Santos
TD, Choi BH, Park HJ.
Abstract
The anti-cancer effects of metformin, the most widely used drug for type 2 diabetes, alone or in combination with ionizing radiation were studied with MCF-7 human breast cancer cells and FSaII mouse fibrosarcoma cells. Clinically achievable concentrations of metformin caused significant clonogenic death in cancer cells. Importantly, metformin was preferentially cytotoxic to cancer stem cells relative to non-cancer stem cells. Metformin increased the radiosensitivity of cancer cells in vitro, and significantly enhanced the radiation-induced growth delay of FSaII tumors (s.c.) in the legs of C3H mice. Both metformin and ionizing radiation activated AMPK leading to inactivation of mTOR and suppression of its downstream effectors such as S6K1 and 4EBP1, a crucial signaling pathway for proliferation and survival of cancer cells, in vitro as well as in the in vivo tumors. CONCLUSION: Metformin kills and radiosensitizes cancer cells and eradicates radioresistant cancer stem cells by activating AMPK and suppressing mTOR.
メトホルミンは卵巣がんのがん幹細胞の増殖を抑制する。
メトホルミンは卵巣がんのがん幹細胞の増殖を抑制する。
メトホルミンは試験管内(in vitro)および生体内(in vivo)において卵巣がんのがん幹細胞をターゲットにする(Metformin
targets ovarian cancer stem cells in vitro and in vivo.)Gynecol Oncol. 2012 Nov;127(2):390-7.
【要旨】
目的:婦人科がん以外のがん細胞を使った研究では、メトホルミンががん幹細胞の増殖を阻害することが示されている。
糖尿病をもつ卵巣がん患者における研究では、メトホルミンを服用しているグループでは服用していないグループに比較して生存率が高いことが示されている。この研究の目的は、卵巣がんのがん幹細胞に対するメトホルミンの作用を検討することである。
方法:培養した卵巣がん細胞株の増殖と生存率に対するメトホルミンの作用はトリパンブルー染色法にて評価した。アルデヒド脱水素酵素(Aldehyde
dehydrogenase: ALDH)を発現しているがん幹細胞はFACS(フローサイトメトリー)で定量した。培養した卵巣がん細胞株やヒト卵巣がん組織から分離したがん幹細胞の増殖に対するメトホルミンの作用はスフェアアッセイ法(がん細胞は非接着条件で培養すると殆どの細胞が死ぬが、がん幹細胞はsphereを作って生育できることを利用したがん幹細胞の試験法)で検討した。
生体内(in vivo)におけるメトホルミンの治療効果と抗がん幹細胞効果は、培養がん細胞とALDH陽性のがん幹細胞を移植した腫瘍で確認した。
結果:メトホルミンは培養卵巣がん細胞の増殖を顕著に抑制した。この抑制効果はシスプラチンと相加的に作用した。メトホルミンがALDH陽性の卵巣がん幹細胞を減少させることはフローサイトメトリー分析で確認された。生体内(in vivo)の試験で、全ての卵巣がん細胞株の移植腫瘍に対するシスプラチンの増殖抑制作用を著明に増強した。さらに、メトホルミンはALDH陽性のがん幹細胞の移植腫瘍の増殖を抑制した。この作用はALDH陽性がん幹細胞と細胞増殖と血管新生の減少と関連していた。
結論;培養(in vitro)と生体内(in vivo)の実験系でメトホルミンは卵巣がん幹細胞の成長と増殖を抑制することができる。この作用は培養卵巣がん細胞株とヒト卵巣がん組織から分離したがん幹細胞のプライマリーカルチャーの両方において当てはまる。これらの結果は卵巣がん患者にメトホルミンを使用する理論的根拠となる。
◎ メトホルミンの抗がん作用については以下のサイトで解説しています。
http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html
【原文】
Gynecol
Oncol. 2012 Nov;127(2):390-7.
Metformin targets
ovarian cancer stem cells in vitro and in vivo.
Shank JJ, Yang K, Ghannam
J, Cabrera
L, Johnston
CJ, Reynolds
RK, Buckanovich
RJ.
Source
Division of
Gynecologic Oncology, Department of Obstetrics and Gynecology, University of
Michigan, Ann Arbor, MI, USA.
Abstract
PURPOSE:
Studies in
non-gynecologic tumors indicate that metformin inhibits growth of cancer stem
cells (CSC). Diabetic patients with ovarian cancer who are taking metformin
have better outcomes than those not taking metformin. The purpose of this study
was to directly address the impact of metformin on ovarian CSC.
METHODS:
The impact of
metformin on ovarian cancer cell line growth and viability was assessed with
trypan blue staining. Aldehyde dehydrogenase (ALDH) expressing CSC were
quantified using FACS®. Tumor sphere assays were performed to determine the
impact of metformin on cell line and primary human ovarian tumor CSC growth in
vitro. In vivo therapeutic efficacy and the anti-CSC effects of metformin were
confirmed using both tumor cell lines and ALDH(+) CSC tumor xenografts.
RESULTS:
Metformin
significantly restricted the growth of ovarian cancer cell lines in vitro. This
effect was additive with cisplatin. FACS analysis confirmed that metformin
reduced ALDH(+) ovarian CSC. Consistent with this, metformin also inhibited the
formation of CSC tumor spheres from both cell lines and patient tumors. In
vivo, metformin significantly increased the ability of cisplatin to restrict
whole tumor cell line xenografts. In addition, metformin significantly
restricted the growth of ALDH(+) CSC xenografts. This was associated with a
decrease in ALDH(+) CSC, cellular proliferation, and angiogenesis.
CONCLUSIONS:
Metformin can restrict
the growth and proliferation of ovarian cancer stem cells in vitro and in vivo.
This was true in cell lines and in primary human CSC isolates. These results
provide a rationale for using metformin to treat ovarian cancer patients.