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ビタミンDは大腸がん患者と乳がん患者の生存率を高める

f-gtc (2014年7月 6日 11:54)

ビタミンDは大腸がん患者と乳がん患者の生存率を高める

Serum 25-hydroxyvitamin D levels and survival in colorectal and breast cancer patients: systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies.(結直腸がんと乳がん患者における血清25-ヒドロキシビタミンDの濃度と生存率の関係:前向きコホート研究の系統的レヴューとメタ解析)Eur J Cancer. 50(8):1510-21.2014

【要旨】
研究の目的:結腸直腸がんと乳がんの患者において、血清中の25-ヒドロキシビタミンD (25(OH)D)の濃度と生存率の間の関連があるかどうかを検討した。

方法:結腸直腸がんと乳がんの患者を対象にして、血清25(OH)D濃度と生存率の関連を検討した前向きコホート研究に関する文献の検索を行い、それらの結果を集計して統計的に解析し、ハザード比を求めた。

結果:結腸直腸がん患者を対象にした5つの臨床試験(患者総数2330人)と乳がん患者を対象にした5つの臨床試験(患者総数4413人)が、血清中の25(OH)Dのレベルを2〜5段階に分類して生存率を比較していた。
結腸直腸がん患者では、25(OH)Dレベルが最も低いグループに対して最も高いグループの全死因死亡率のハザード比は0.7195%信頼区間:0.55-0.91)、結腸直腸がんによる死亡率のハザード比は0.65 (95%信頼区間:0.49-0.86)であった。
乳がん患者では、25(OH)Dレベルが最も低いグループに対して最も高いグループの全死因死亡率のハザード比は0.6295%信頼区間:0.49-0.78)、乳がんによる死亡率のハザード比は0.58 (95%信頼区間:0.38-0.84)であった。

結論:結腸直腸がんの患者と乳がんの患者において、血清中の25(OH)Dの高値(>75nmol/L)は死亡率の低下と関連していた。血清

結腸直腸がん患者と乳がん患者において、診断時や治療の開始前に血清中の25(OH)Dレベルが低い(<50nmol/L)場合に、ビタミンDをサプリメントで補うことで生存率を改善できるかどうかを検討するランダム化比較対照試験を実施する必要がある。

(注)
もともと25-OHビタミンD3の血清濃度が高い人が、さらにサプリメントでビタミンD3を多く摂取してがん死亡率をさらに低下できるかどうかはまだデータがありません。しかし、25-OHビタミンD3の血清濃度が低い人(50 nmol/L以下)の場合はサプリメントでの補充は生存率を1.5倍から2倍くらいに高める可能性は高いようです25-OHビタミンD3の50nmol/L25ng/ml

原文:

Eur J Cancer. 2014 May;50(8):1510-21. doi: 10.1016/j.ejca.2014.02.006. Epub 2014 Feb 28.

Serum 25-hydroxyvitamin D levels and survival in colorectal and breast cancer patients: systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies.

Abstract

AIM:

To estimate the association between serum 25-hydroxyvitamin D (25(OH)D) levels and survival among colorectal and breast cancer patients.

METHODS:

We performed a comprehensive literature search of prospective cohort studies assessing the association of serum 25(OH)D levels with survival in colorectal and breast cancer patients. Study characteristics and results were extracted and dose-response relationships were graphically displayed in a standardised manner. Meta-analyses using random effects models were performed to estimate pooled hazard ratios.

RESULTS:

The systematic search yielded five studies including 2330 colorectal cancer patients and five studies including 4413 breast cancer patients all of which compared mortality across two to five categories of 25(OH)D levels. Among colorectal cancer patients, pooled hazard ratios (95% confidence intervals) comparing highest with lowest categories were 0.71 (0.55-0.91) and 0.65 (0.49-0.86) for overall and disease-specific mortality, respectively. For breast cancer patients, the corresponding pooled estimates were 0.62 (0.49-0.78) and 0.58 (0.38-0.84), respectively. No significant evidence of heterogeneity between studies was observed.

CONCLUSION:

Higher 25(OH)D levels (>75nmol/L) were associated with significantly reduced mortality in patients with colorectal and breast cancer. Randomised controlled trials are needed to evaluate whether vitamin D supplementation can improve survival in colorectal and breast cancer patients with low vitamin D status (25(OH)D<50nmol/L) at diagnosis and before treatment.

メトホルミンは直腸がんの化学放射線療法の効き目を高める

f-gtc (2013年12月22日 15:29)

メトホルミンは直腸がんの化学放射線療法の効き目を高める

Metformin use and improved response to therapy in rectal cancer(メトホルミンは直腸がんの治療効果を高める)Cancer Med. 2(1): 99-107, 2013

【要旨】

原発部位が進行している直腸がんの場合は、手術前に化学放射線治療(chemoradiation)を行って腫瘍を縮小させてから全直腸間膜切除術(TMEtotal mesorectal excision)を行うことが多い。

メトホルミンが直腸がんの化学予防剤として有効である可能性や、直腸がんの治療効果を高める可能性が今までの多くの研究によって示唆されている。

そこで、この研究では、直腸がんの化学放射線治療の病理学的完全奏功率(pathologic complete response rates)と予後に対するメトホルミンの効果を検討した。

局所進行した直腸腺がんで1996年から2009年の間に化学放射線療法と全直腸間膜切除術を受けた482例のカルテを検証した。

放射線照射量の中央値は50.4Gy19.863 Gy)で、98%の患者は5-FUをベースにした抗がん剤の同時投与を受け、81.3%は放射線治療後に抗がん剤治療を受けた。

422例は非糖尿病患者で、40例は糖尿病がありメトホルミンを服用していない患者で、20例は糖尿病があってメトホルミンを服用していた。

この3つのグループの間には、がんの臨床的分類や、リンパ節転移の状況、肛門からの腫瘍の距離、がんの深達度、診断時の腫瘍マーカー(CEA)の値、がん細胞の分化度において差を認めなかった。

病理学的完全奏功(pathologic complete response)の率は、非糖尿病患者が16.6%、メトホルミンの投与を受けていない糖尿病患者が7.5%、メトホルミンを服用している糖尿病患者が35%であった。

メトホルミンを服用している糖尿病の患者のグループは、非糖尿病のグループ(p=0.03)と糖尿病でメトホルミンを服用していないグループ(p=0.007)と比べて、統計的有意に化学放射線治療の病理学的完全奏功率が高かった。

メトホルミンの併用は、単変量解析(p=0.05)と多変量解析(p=0.01)の療法の解析で、病理学的完全奏功率と統計的有意に相関していた。

さらに、メトホルミンを服用している糖尿病患者では、メトホルミンを服用していない糖尿病患者に比べて、無再発生存期間(p=0.013)と全生存期間(p=0.008)が統計的有意に長かった。

メトホルミンの服用は、直腸がんの術前化学放射線治療の病理学的完全奏功率を高め、生存期間を延長する効果が認められた。さらに前向き研究によって、このメトホルミンの効果を検証する必要がある。

 

(訳者注)

この論文は、米国のテキサス大学MDアンダーソンがん研究所からの研究報告です。

局所進行した直腸がんの場合、手術で切除する前に放射線治療と5-FUベースの抗がん剤治療の併用によって腫瘍を縮小させてから摘出手術を行うことが欧米では標準治療となっており、手術単独の場合にくらべて優れた治療成績が報告されています。日本でも術前の化学放射線療法を併用する所が増えています。

手術前に化学放射線治療を行って、手術で切除したがん組織を病理で検査すると、生きたがん細胞が見つからない(がんが完全に死滅している)場合があり、これを病理学的完全奏功(pathological complete response)といいます。
病理学的完全奏功が認められた患者さんは、再発率が低く、予後が極めて良いとこが明らかになっています。したがって、手術前の化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤治療)の効果を高めるための抗がん剤の組み合わせの検討や、化学放射線療法の効き目を高める補助療法の検討が行われています。

この臨床試験は、過去に遡った後ろ向きの研究ですが、メトホルミンが直腸がんの化学放射線療法の効果を高めることが示されています。

通常、糖尿病があると、直腸がんや大腸がんの手術後の再発率が高くなることが、過去の疫学研究で示されています。さらに、直腸がんの術前化学放射線療法の効果も低いことが知られています。ある臨床試験では、直腸がんの術前化学放射線療法で病理学的完全奏功率が非糖尿病患者で23%に対して糖尿病患者では0%という結果が報告されています(Ann. Surg. Oncol. 2008;15:1931-1936)。

しかし、メトホルミンを服用している糖尿病患者は、メトホルミンを服用していない糖尿病患者だけでなく、糖尿病がない(したがってメトホルミンも服用していない)患者よりも、病理学的完全奏功の率が高かったという結果が得られており、メトホルミン自体に化学放射線療法の効果を高める作用を示唆しています。

直腸がんの術前化学放射線治療における病理学的完全奏功率は、今までの臨床試験では15%前後の数値が報告されています。この論文のデータでも非糖尿病のグループの病理学的完全奏功率は16.6%です。それに比べてメトホルミンを服用しているグループでは35%に増えています。

メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素を阻害してATP産生を阻害し、AMP依存性プロテインキナーゼを活性化する作用があり、その他にも複数の抗腫瘍効果が報告されています。

がん細胞のエネルギー産生を抑制することは抗がん剤や放射線の治療効果を高める方法として有効であることは十分に理解できると思います。

メトホルミンは糖尿病の治療薬ですが、インスリン感受性を高めてインスリンの分泌を減らす作用(少ないインスリン量で血糖をコントロールできるようにする作用)であるため、糖尿病がなくても服用できます。

最近は糖尿病が無いがん患者にメトホルミンを投与して抗がん剤の効き目を高めるを作用を認めたという報告もあります。

抗がん剤や放射線治療の補助療法としてメトホルミンの併用は有用と言えそうです。


 メトホルミン抗がん作用については以下サイトで解説しています

http://www.1ginzaclinic.com/metfomin/metformin.html

 

(原文)

Cancer Med. 2013 Feb;2(1):99-107. doi: 10.1002/cam4.54. Epub 2013 Feb 3.

Metformin use and improved response to therapy in rectal cancer.

Skinner HD, Crane CH, Garrett CR, Eng C, Chang GJ, Skibber JM, Rodriguez-Bigas MA, Kelly P, Sandulache VC, Delclos ME, Krishnan S, Das P.

Author information

 

 

Abstract

Locally advanced rectal cancer is commonly treated with chemoradiation prior to total mesorectal excision (TME). Studies suggest that metformin may be an effective chemopreventive agent in this disease as well as a possible adjunct to current therapy. In this study, we examined the effect of metformin use on pathologic complete response (pCR) rates and outcomes in rectal cancer. The charts of 482 patients with locally advanced rectal adenocarcinoma treated from 1996 to 2009 with chemoradiation and TME were reviewed. Median radiation dose was 50.4 Gy (range 19.8-63). Nearly, all patients were treated with concurrent 5-fluorouracil-based chemotherapy (98%) followed by adjuvant chemotherapy (81.3%). Patients were categorized as nondiabetic (422), diabetic not taking metformin (40), or diabetic taking metformin (20). No significant differences between groups were found in clinical tumor classification, nodal classification, tumor distance from the anal verge or circumferential extent, pretreatment carcinoembryonic antigen level, or pathologic differentiation. pCR rates were 16.6% for nondiabetics, 7.5% for diabetics not using metformin, and 35% for diabetics taking metformin, with metformin users having significantly higher pCR rates than either nondiabetics (P = 0.03) or diabetics not using metformin (P = 0.007). Metformin use was significantly associated with pCR rate on univariate (P = 0.05) and multivariate (P = 0.01) analyses. Furthermore, patients taking metformin had significantly increased disease-free (P = 0.013) and overall survival (P = 0.008) compared with other diabetic patients. Metformin use is associated with significantly higher pCR rates as well as improved survival. These promising data warrant further prospective study.

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