がんの漢方治療の最近のブログ記事
漢方治療はがん患者の生存率を高める
漢方治療はがん患者の生存率を高める
台湾におけるがん治療における中医薬(漢方薬)治療の実態に関して多くの報告があります。
以下の論文では漢方治療を受けたがん患者は漢方治療を受けなかったがん患者より生存率が高いことが報告されています。
Use
of Complementary Traditional Chinese Medicines by Adult Cancer Patients in
Taiwan: A Nationwide Population-Based Study(台湾における成人がん患者による伝統的中医薬の補完的使用:全国民ベースの研究)Integr
Cancer Ther. 2018 Jun; 17(2): 531-541.
【要旨】
研究の背景:がん患者の多くは、補完的な代替医療を求めている。台湾の成人がん患者による伝統的な中医薬(漢方薬)の使用を調査した。
方法: 台湾の難治性疾患患者登録データベース(Registry for
Catastrophic Illness Patients Database)を調査し、国際疾病分類(第9改正)に基づいて、2001年から2009年までのがんと診断された全ての成人を対象にして、2011年まで追跡調査した。このデータベースにより、中医薬使用者(n=74620)と非使用者(n = 508179)を分類できた。すべての人口統計学的および臨床的なデータが分析された。
結果: 中医薬を使用していないがん患者と比較して、中医薬を使用しているがん患者は、より若く、女性とホワイトカラーの労働者(頭脳労働をする人)が多い傾向にあり、さらに高度に都市化の進んだ地域(highly
urbanized areas)に住んでいる人が多かった。
がんの診断を受けてから中医学のクリニックに相談に行くまでの平均間隔は15.3ヶ月であった。
最も多いがんの種類は、中医薬使用者では乳がん(19.4%)であり、中医薬非使用者では肝内胆管がん(13.6%)であった。
中医薬使用者が中医学の診療所を訪れた主な理由は、内分泌系異常、栄養障害および代謝性疾患、免疫障害であった。
中医薬使用者の33.1%が年間に9回以上中医学診療所を訪問し、がんの診断から最初に中医学治療の相談に行くまでの期間の平均は5.14ヶ月であった。
中医学的治療のうち最も多かったのは中医薬(漢方薬)であった。
がん患者が中医学的治療を求めた理由は、不眠、倦怠感・疲労、めまい・頭痛、胃腸障害、筋肉痛・筋膜炎、不安・うつ病であった。
年齢、性別、居住地の都市化、職業、医療期間への訪問回数、および非医療関係のセンターの訪問を調整後の解析で、中医薬非使用者に比べて中医薬使用者の死亡率は低く、その死亡率の調整ハザード比は0.69(95%信頼区間 = 0.68-0.70)であった。
結論:本研究では、台湾の成人がん患者における中医薬(漢方薬)使用の概要を提供している。 中医薬の使用は、がんの種類の違いによって様々であった。がん患者を診療する医師は、患者が使用している補完的な中医薬(漢方薬)の使用にもっと注意を払うべきである。
【解説】
情報技術の進歩により、今やビッグデータの時代と言われています。医療の疫学研究でも医療ビッグデータを利用した研究が増えています。
台湾では、1995年に国民皆保険制度を実現しています。
台湾の医療制度は、「全民健康保険(National Health Insurance)」という台湾政府が管理するシステムで、台湾で戸籍を持つ全ての人に対して平等な医療ケアを提供するために作られました。国民全員を加入対象とした完全な社会保険制度で、国民全員が出生した時点で、平等に医療を受ける権利を享受できできます。
健康保険証はICカードのみで、医療事務の電子システム化が進んでおり、オンライン請求率は2006年には99.98%に達しています。
このような状況で、台湾では国民全体の医療情報(年齢、性別、病名、治療内容など)がデータベース化されています。この「全民健康保険研究データベース(National health insurance research database;
NHIRD)」を使った疫学研究が台湾から数多く発表されています。
がんの場合はNHIRDの中に「難治性疾患患者登録データベース(Registry for Catastrophic Illness Patients
Database)」というデータベースもあります。
台湾の全民健康保険(National Health Insurance)では、がん患者は西洋医学の標準治療だけでなく、中医学治療(漢方治療)も保険給付され、それらの情報がデータベース化されています。したがって、漢方治療を受けたがん患者と漢方治療を受けなかったがん患者で、生存率や生存期間の比較も可能になっています。
ハザード比(Hazard ratio)というのは追跡期間を考慮したリスクの比です。この論文のリスクは死亡率です。
この報告において、漢方薬非使用群に対する漢方薬使用群の死亡率のハザード比が0.69というのは、追跡期間中に漢方薬を服用したがん患者は漢方薬を服用しなかったがん患者に比べて死亡率が31%減少したという意味になります。
95%信頼区間とは,仮に同様な試験を100回した場合に95回はこの値の幅の中に入るという意味です。95%信頼区間 = 0.24-0.45というのは、同様な試験を100回行なえば、95回はハザード比が0.24-0.45の間に入ることを意味します。つまり、漢方薬ががん患者を延命させる可能性は極めて高いという結果です。
漢方薬を使用する人は女性が多く、都市化の進んだ地域に住んでいる人が多いという結果が得られています。
都市の方が漢方薬などの中医学治療を行なっている医療機関が多いというアクセスの良さが理由のようです。田舎では中医学のクリニックが無いということです。
都市化が進んだ地域は、生活環境や医療環境も良いので、それが生存率に影響する可能性があります。また、女性は男性よりも寿命が長いので、女性が多いことが生存率の高さに影響する可能性もあります。
そこで、このような交絡因子(調べようとする因子以外の因子で、病気や死亡の発生に影響を与えるもの)の影響をさける目的で、年齢、性別、居住地の都市化、職業、医療期間への訪問回数、および非医療関係のセンターの訪問を調整後のハザード比を計算しています。
その結果、漢方薬服用はがん患者の死亡率を30%くらい低下させるという結果が得られたということです。
【原文】
Integr
Cancer Ther. 2018 Jun;17(2):531-541. doi:
10.1177/1534735417716302. Epub 2017 Jun 30.
Use of Complementary Traditional Chinese Medicines by Adult Cancer Patients in
Taiwan: A Nationwide Population-Based Study.
Kuo YT1,2, Chang TT1,3, Muo CH4, Wu MY3, Sun MF1,3, Yeh CC2,5, Yen HR1,3,6.
Abstract
BACKGROUND:
Many patients with cancer
seek complementary and alternative medicine treatments. We investigated the use
of traditional Chinese medicine (TCM) by adult cancer patients in Taiwan.
METHODS:
We reviewed the Registry
for Catastrophic Illness Patients Database of Taiwan, and included all adult
patients diagnosed cancer, based on the International Classification of
Diseases (ninth revision), from 2001 to 2009 and followed until 2011. This
database allowed categorization of patients as TCM users (n = 74 620) or non-TCM
users (n = 508 179). All demographic and clinical claims data were analyzed.
RESULTS:
Compared with non-TCM
users, TCM users were younger and more likely to be female, white-collar
workers, and reside in highly urbanized areas. The average interval between
cancer diagnosis and TCM consultation was 15.3 months. The most common cancer
type was breast cancer in TCM users (19.4%), and intrahepatic bile duct cancer
in non-TCM users (13.6%). The major condition for which TCM users visited
clinics were endocrine, nutritional and metabolic diseases, and immunity
disorders (23.2%). A total of 33.1% of TCM users visited TCM clinics more than
9 times per year and their time from diagnosis to first TCM consultation was
5.14 months. The most common TCM treatment was Chinese herbal medicine. The
common diseases for which cancer patients sought TCM treatment were insomnia,
malaise and fatigue, dizziness and headache, gastrointestinal disorders,
myalgia and fasciitis, anxiety, and depression. Overall, TCM users had a lower
adjusted hazard ratio (aHR) for mortality (aHR = 0.69, 95% CI = 0.68-0.70)
after adjustment for age, sex, urbanization of residence, occupation, annual
medical center visits, and annual non-medical center visits.
CONCLUSIONS:
This study provides an overview of TCM usage among adult cancer patients in Taiwan. TCM use varied among patients with different types of cancer. Physicians caring for cancer patients should pay more attention to their patients' use of complementary TCM.
漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める
漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める
台湾の医療ビッグデータを利用した疫学研究で、膵臓がん患者で漢方薬(中医薬)を使用した患者は、漢方薬を使用しなかった患者よりも生存率が高いことが示されています。漢方治療の期間が長いほど生存率が高いという用量依存性も示されています。以下のような報告があります。
Complementary Chinese Herbal Medicine Therapy Improves Survival of Patients With Pancreatic Cancer in Taiwan: A Nationwide Population-Based Cohort Study.(台湾において補完的な漢方治療は膵臓がん患者の生存率を高める:全国人口レベルのコホート研究)Integr Cancer Ther. 2018 Jun; 17(2): 411-422.
【要旨】背景:膵臓がんは治療が困難ながんであり、発見が遅れることが多く、予後は不良である。一部の患者は伝統的な中国医学の治療を受けている。我々は、台湾の膵臓がん患者における補完的な漢方薬治療の利点を調べることを目指した。
方法:1997年から2010年に台湾難治性疾患患者登録データベース(Taiwanese Registry for Catastrophic Illness Patients Database)に登録された全ての膵臓がん患者を対象とした。年齢、性別、膵臓がんと診断された年を一致させた1:1マッチング法を用いて、漢方治療を併用した386人と、漢方治療を併用しない386人を比較解析した。死亡リスクの危険率(ハザード比)はCox回帰モデルを用いて比較した。生存期間の差はKaplan-Meier曲線を用いて比較した。
結果:漢方薬の使用、年齢、性別、都市化レベル、他の病気の有無および治療に関して相互に調整されたCoxハザード比モデルによる解析で、漢方治療を受けた患者は死亡リスクのハザード比が低かった(調整ハザード比 = 0.67,95%信頼区間 = 0.56-0.79)。 漢方療法を90日間以上受けた患者は、漢方治療を受けなかった患者よりも死亡リスクのハザード比が有意に低かった。漢方治療を90〜180日間受けた群では、調整後ハザード比 = 0.56(95%信頼区間 = 0.42〜0.75)で、180日間以上漢方治療を受けた群では ハザード比= 0.33(95%信頼区間 = 0.24-0.45)であった。 漢方薬併用群の患者の生存率は高かった。
患者が使用した生薬と漢方方剤で最も頻度が高かったのは、単一の生薬では白花蛇舌草で、漢方処方では香砂六君子湯であった。
結論:補完的な中国薬草療法(漢方治療)は、膵臓がん患者の死亡率を低下させる可能性がある。今後はさらに前向き臨床試験によってこの結果を確認する必要がある。
【解説】
漢方薬(中医薬)治療を受けた期間が長いほど延命効果があるという結果です。
漢方処方では香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)が多く、単一の生薬では白花蛇舌草の使用頻度が高いという膵臓がんの漢方治療の特徴を明らかにしています。
香砂六君子湯は、胃腸虚弱で消化管に水分が停滞しやすいタイプに用いる六君子湯(人参、白朮、茯苓、大棗、甘草、生姜、半夏、陳皮)に、さらに胃腸の機能を高め、食欲を亢進し、気分の塞さがりを開く働きがある香附子、縮砂、藿香を加えた処方です。六君子湯に抗うつ作用を加えた処方といえます。
香附子・縮砂・藿香は香りが良く、気の巡りを改善し、気うつの症状(気分が沈む、気分が塞がる、意気消沈する精神状態)を改善します。
膵臓がんでは胃腸の働きが低下し、食欲が低下します。さらにうつ症状を呈することが多く経験されます。したがって、進行した膵臓がん患者さんは香砂六君子湯の証が多くなるのかもしれません。
白花蛇舌草は抗がん作用のある生薬です。
白花蛇舌草の煎じ薬は、肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。多くのがんに広く使用され、良い治療効果が報告されています。 飲み易く刺激性が少ないので、食欲が低下した進行がんにも適しています。
漢方治療は膵臓がんの抗がん剤治療の副作用軽減と抗腫瘍効果増強に有効です。
その結果、QOL(生活の質)を高め、延命します。
図:(右)漢方治療は体力・免疫力を増強する効果と直接的な抗腫瘍作用(がん細胞の増殖抑制、アポトーシス誘導など)によって、QOL(生活の質)の改善と延命効果がある。
(左)台湾の医療ビッグデータを利用した疫学研究で、膵臓がん患者で漢方薬(中医薬)を使用した患者は、漢方薬を使用しなかった患者よりも生存率が高いことが示されている。漢方治療の期間が長いほど生存率が高いという用量依存性も示されている。
【原文】
Integr Cancer
Ther. 2018 Jun;17(2):411-422. doi: 10.1177/1534735417722224. Epub 2017 Aug 3.
Complementary Chinese Herbal Medicine Therapy Improves Survival of Patients
With Pancreatic Cancer in Taiwan: A Nationwide Population-Based Cohort Study.
Abstract
BACKGROUND:
Pancreatic cancer is a difficult-to-treat cancer with a late presentation and poor prognosis. Some patients seek traditional Chinese medicine (TCM) consultation. We aimed to investigate the benefits of complementary Chinese herbal medicine (CHM) among patients with pancreatic cancer in Taiwan.
METHODS:
We included all patients with pancreatic cancer who were registered in the Taiwanese Registry for Catastrophic Illness Patients Database between 1997 and 2010. We used 1:1 frequency matching by age, sex, the initial diagnostic year of pancreatic cancer, and index year to enroll 386 CHM users and 386 non-CHM users. A Cox regression model was used to compare the hazard ratios (HRs) of the risk of mortality. The Kaplan-Meier curve was used to compare the difference in survival time.
RESULTS:
According to the Cox hazard ratio model mutually adjusted for CHM use, age, sex, urbanization level, comorbidity, and treatments, we found that CHM users had a lower hazard ratio of mortality risk (adjusted HR = 0.67, 95% CI = 0.56-0.79). Those who received CHM therapy for more than 90 days had significantly lower hazard ratios of mortality risk than non-CHM users (90- to 180-day group: adjusted HR = 0.56, 95% CI = 0.42-0.75; >180-day group: HR = 0.33, 95% CI = 0.24-0.45). The survival probability was higher for patients in the CHM group. Bai-hua-she-she-cao (Herba Oldenlandiae; Hedyotis diffusa Spreng) and Xiang-sha-liu-jun-zi-tang (Costus and Chinese Amomum Combination) were the most commonly used single herb and Chinese herbal formula, respectively.
CONCLUSIONS:
Complementary
Chinese herbal therapy might be associated with reduced mortality among
patients with pancreatic cancer. Further prospective clinical trial is
warranted.
漢方治療(中医薬治療)は肺がんの抗がん剤治療の効果を高める
漢方治療(中医薬治療)は肺がんの抗がん剤治療の効果を高める
The efficacy of Chinese herbal medicine as an adjunctive therapy for advanced non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis.(進行非小細胞性肺がんの補助療法として中医薬治療の有効性:系統的レビューとメタ解析)PLoS One. 2013;8(2):e57604.
【要旨】
進行した非小細胞性肺がんの治療において、標準治療と補完・代替医療との併用、特に中医薬治療(Chinese herbal medicine)の併用に関して多くの研究が行われている。しかし、その有効性に関しては十分に検討されていない。
この研究の目的は、進行した非小細胞性肺がんの治療において、標準的な抗がん剤治療に中医薬治療を併用した場合の有効性を評価することにある。
11のデータベースを検索し、条件に合う24の臨床試験を選び出した。これらの臨床試験に含まれる2109人の患者のデータを解析した。2109人のうち、1064人は抗がん剤治療と中医薬の併用による治療を受け、1039人は抗がん剤治療のみを受けた(6人の患者は脱落した)
抗がん剤治療単独群に比べて、抗がん剤と中医薬を併用した群は1年生存率が著明に向上した。(相対比 = 1.36, 95% 信頼区間 = 1.15-1.60, p = 0.0003). その他に、併用群では奏功率 (相対比 = 1.36, 95% 信頼区間 = 1.19-1.56,
p<1.0E-5) や、カルノフスキー・パフォーマンス・スコア
(Karnofsky performance score)で評価した全身状態の改善の率(相対比 = 2.90, 95% 信頼区間 = 1.62-5.18, p = 0.0003)も向上した. 一方、副作用に関しては、併用群で著明な軽減が認められた。例えば、グレード3〜4の吐き気や嘔吐の頻度は併用群で顕著に低減した (相対比 = 0.24, 95%信頼区間 = 0.12-0.50, p = 0.0001) 。ヘモグロビンや血小板の減少の頻度も併用群では低下した。
さらに、この研究では、非小細胞性肺がんに高頻度に使用される生薬が同定された。
この系統的レヴューは、進行した非小細胞性肺がんの治療において、中医薬治療は抗がん剤治療の補助療法として有用で、抗がん剤の副作用を軽減し、生存率を向上し、抗がん剤による腫瘍の縮小効果(奏功率)を高め、全身状態を良くする効果があることが示された。
しかしながら、今回検討したランダム化比較臨床試験の多くは小規模なものばかりで、大規模なランダム化試験は含まれていないので、今後はさらに大規模な臨床試験の実施が必要である。
【コメント】
非小細胞性肺がんに高頻度に使用される生薬としては、黄蓍(オウギ)、南沙参(ナンシャジン)、麦門冬(バクモンドウ)、甘草(カンゾウ)、茯苓(ブクリョウ)、白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ)、天門冬(テンモンドウ)、桃仁(トウニン)、田七人参(デンシチニンジン)が挙げられています。その薬効から予想されるものです。
このメタ解析の元になった臨床試験は全て中国で実施されたもので、24の臨床試験で2100人程度のデータを集めているので、一つの臨床試験の規模は平均で100人弱なので、小規模と言わざるを得ません。
メタ解析(メタアナリシス:meta-analysis)とは、過去に行われた複数の研究結果を統合し、統計的に総合評価を行う方法です。一つ一つの研究では症例数が少なくて統計的に差がでなくても、そのような研究データをまとめて統計的に処理すれば、より信頼性の高い結果が得られます。
一般的に、メタ解析で有効性が示されれば、かなりエビデンスが高いという評価になります。しかし、大規模なランダム化試験で有意な結果がでなければ、確定とは言えません。
しかし、抗がん剤治療に漢方薬や中医薬を併用しても、悪い結果になる可能性は低く、むしろ良い効果が得られると言えます。
PLoS One. 2013;8(2):e57604. doi: 10.1371/journal.pone.0057604. Epub 2013 Feb 28.
The efficacy of Chinese herbal medicine as an adjunctive
therapy for advanced non-small cell lung cancer: a systematic review and
meta-analysis.
Li SG, Chen HY, Ou-Yang CS, Wang XX, Yang ZJ, Tong Y, Cho WC.
Source
Graduate School, Guangzhou University of Chinese
Medicine, Guangzhou, China.
Abstract
Many published studies reflect the growing application of complementary and alternative medicine, particularly Chinese herbal medicine (CHM) use in combination with conventional cancer therapy for advanced non-small cell lung cancer (NSCLC), but its efficacy remains largely unexplored. The purpose of this study is to evaluate the efficacy of CHM combined with conventional chemotherapy (CT) in the treatment of advanced NSCLC. Publications in 11 electronic databases were extensively searched, and 24 trials were included for analysis. A sum of 2,109 patients was enrolled in these studies, at which 1,064 patients participated in CT combined CHM and 1,039 in CT (six patients dropped out and were not reported the group enrolled). Compared to using CT alone, CHM combined with CT significantly increase one-year survival rate (RR = 1.36, 95% CI = 1.15-1.60, p = 0.0003). Besides, the combined therapy significantly increased immediate tumor response (RR = 1.36, 95% CI = 1.19-1.56, p<1.0E-5) and improved Karnofsky performance score (KPS) (RR = 2.90, 95% CI = 1.62-5.18, p = 0.0003). Combined therapy remarkably reduced the nausea and vomiting at toxicity grade of III-IV (RR = 0.24, 95% CI = 0.12-0.50, p = 0.0001) and prevented the decline of hemoglobin and platelet in patients under CT at toxicity grade of I-IV (RR = 0.64, 95% CI = 0.51-0.80, p<0.0001). Moreover, the herbs that are frequently used in NSCLC patients were identified. This systematic review suggests that CHM as an adjuvant therapy can reduce CT toxicity, prolong survival rate, enhance immediate tumor response, and improve KPS in advanced NSCLC patients. However, due to the lack of large-scale randomized clinical trials in the included studies, further larger scale trials are needed.
半枝蓮はがん細胞の解糖系と酸化的リン酸化を阻害する。
半枝蓮はがん細胞の解糖系と酸化的リン酸化を阻害する。
半枝蓮抽出エキスのBezielleは解糖系と酸化的リン酸化を阻害してがん細胞のミトコンドリアを選択的にターゲットにする。(Bezielle selectively targets mitochondria of cancer cells to inhibit
glycolysis and OXPHOS.)PLoS One 2012; 7(2):e30300. Epub
2012 Feb 3.
この論文は半枝蓮の抽出エキスをがん治療薬として開発しているBioNovo社の研究グループ(BioNovo, Inc., California, USA)からの報告です。
【要旨】
Bezielle (BZL101)は、進行した乳がんを対象にした初期の臨床試験で有効性と安全性が認められた開発中の経口薬である。Bezielleは半枝蓮(Scutellaria barbata)というハーブの水抽出エキスである。我々は以前の研究で、Bezielleはがん細胞に選択的に毒性を示し、正常細胞には毒性を示さないことを報告している。
がん組織において、Bezielleは活性酸素を発生させ、DNAにダメージを与え、ポリ-ADP-リボース合成酵素(PARP)を過剰に活性化させ、細胞内のATP(アデノシン3リン酸)とNAD(ニコチンアミドジヌクレオチド)を枯渇させ、解糖系を阻害する。
今回の研究では、がん細胞においてBezielleによって誘導される活性酸素の産生の発生源はがん細胞のミトコンドリアであることを明らかにした。
がん細胞の入った培養液にBezielleを添加すると、ミトコンドリア内でスーパーオキシドおよびペルオキシド型の活性酸素の産生が亢進する。
ミトコンドリアでの呼吸を阻害すると、活性酸素の産生は阻止され、Bezielle添加で誘導される細胞死も阻止された。解糖系のみならず、Bezielleはがん細胞の酸化的リン酸化も阻害し、その結果、ミトコンドリアにおけるATP産生量を低下させる。
ミトコンドリアの働きを欠損しているがん細胞では、Bezielleの存在下でも解糖系の活性を維持した。これは、ミトコンドリアがBezielleの第一のターゲットであることを意味している。
Bezielle が正常細胞に対して与える酸化的ダメージは低く、正常細胞に対する Bezielleの代謝的影響はほとんど認めなかった。
以上のことから、Bezielleはがん細胞のミトコンドリアを選択的にターゲットにする薬で、酸化的リン酸化と解糖系の両方を阻害する作用を持つという点において、他の医薬品には無い特徴を持っている。今回の研究結果は、Bezielleのがん細胞に対する選択的な細胞毒性の作用機序を明らかにしている。
【訳者注】
Bezielle (BZL101, FDA
IND#59.521)というのは、現在米国で臨床試験が行われている開発中の抗がん剤ですが、その本体はハーブの半枝蓮の水溶性の抽出エキスです。乳がんや膵臓がんを対象にした臨床試験で有効性と安全性が確かめられています。副作用が少なく効果がある経口の抗がん剤という点でメリットの多い薬ですが、中国や台湾などでは、経験的にがんに有効であることが古くから知られており、民間療法や漢方治療としてがんの治療に良く使われている植物です。正常細胞に対する毒性は少なく、がん細胞に選択的に細胞毒性を示すので、その作用機序が注目されています。
この論文では、Bezielleの第一のターゲットががん細胞のミトコンドリアであり、がん細胞のミトコンドリアにおける活性酸素の発生を高めることによってがん細胞にダメージを与えることを示しています。
活性酸素によってDNAがダメージを受けると、それを修復するためにポリADPリボース合成酵素(PARP)の活性が亢進します。PARPは、DNA損傷に伴い活性化され、NADを基質として様々な核タンパク質にADP一リボース残基を付加重合する翻訳後修飾反応を触媒する酵素で、DNA修復や細胞死および分化制御に関与しています。
つまり、PARPが活性化するとNADが枯渇し、解糖系が阻害されます。解糖系ではNADが必要だからです。ATPとNADが枯渇することによって、がん細胞が死滅するというストーリーです。
がん細胞でミトコンドリアを活性化させ、ミトコンドリアでの活性酸素の産生を増やして酸化ストレスを増大させてがん細胞を死滅させようとするのがジクロロ酢酸ナトリウムです。
一方、高濃度ビタミンC点滴は、がん細胞に取込まれて、細胞内で過酸化水素を発生し、DNAを損傷してPARPを活性化させ、NADが枯渇して解糖系が進まなくなるという作用機序が提唱されています。
Bezielle(半枝蓮)の実験では、ミトコンドリアの活性が低下しているがん細胞では、活性酸素の発生も細胞死も起こらないことが示されています。薬でミトコンドリアの活性を低下させると、Bezielleを添加しても活性酸素の産生が起こらず細胞死も起こりません。
多くのがん細胞はもともとミトコンドリアの活性が低いという特徴があります。したがって、ジクロロ酢酸ナトリウムでミトコンドリアを活性化する治療と半枝蓮は相乗効果が期待できます。さらに、DNAダメージとPARPの活性化とNADの枯渇を来す高濃度ビタミンC点滴も相乗効果が期待できます。
さらに、細胞内に多く含まれる鉄と反応してフリーラジカルを発生させるアルテスネイトもがん細胞に酸化ストレスを高めることによって抗がん作用を示します。
すなわち、半枝蓮、ジクロロ酢酸ナトリウム、高濃度ビタミンC点滴、アルテスネイトの組合せが相乗的に抗がん作用を強めることが示唆されます。
最近はミトコンドリアをターゲットにしたがん治療薬の開発が注目されています。ミトコンドリアをターゲットとする抗がん剤を「Mitocans」と呼ばれています。
天然成分にもミトコンドリアが作用して抗がん作用を発揮するものが多くありますが、半枝蓮はMitocansの一つと言えます。
【原文】
PLoS One. 2012;7(2):e30300.
Epub 2012 Feb 3.
Bezielle selectively targets
mitochondria of cancer cells to inhibit glycolysis and OXPHOS.
Chen V, Staub RE, Fong S,
Tagliaferri M, Cohen I, Shtivelman E.
Source
BioNovo, Inc., Emeryville,
California, United States of America.
Abstract
Bezielle (BZL101) is a candidate oral drug that has shown promising efficacy and excellent safety in the early phase clinical trials for advanced breast cancer. Bezielle is an aqueous extract from the herb Scutellaria barbata. We have reported previously that Bezielle was selectively cytotoxic to cancer cells while sparing non-transformed cells. In tumor, but not in non-transformed cells, Bezielle induced generation of ROS and severe DNA damage followed by hyperactivation of PARP, depletion of the cellular ATP and NAD, and inhibition of glycolysis. We show here that tumor cells' mitochondria are the primary source of reactive oxygen species induced by Bezielle. Treatment with Bezielle induces progressively higher levels of mitochondrial superoxide as well as peroxide-type ROS. Inhibition of mitochondrial respiration prevents generation of both types of ROS and protects cells from Bezielle-induced death. In addition to glycolysis, Bezielle inhibits oxidative phosphorylation in tumor cells and depletes mitochondrial reserve capacity depriving cells of the ability to produce ATP. Tumor cells lacking functional mitochondria maintain glycolytic activity in presence of Bezielle thus supporting the hypothesis thatmitochondria are the primary target of Bezielle. The metabolic effects of Bezielle towards normal cells are not significant, in agreement with the low levels of oxidative damage that Bezielle inflicts on them. Bezielle is therefore a drug that selectively targets cancer cell mitochondria, and is distinguished from other such drugs by its ability to induce not only inhibition of OXPHOS but also of glycolysis. This study provides a better understanding of the mechanism of Bezielle's cytotoxicity, and the basis of its selectivity towards cancer cells.