ドコサヘキサエン酸は細胞膜の脂質過酸化を促進してフェロトーシス誘導を増強する

◉ 細胞は脂質二重層で包まれている

体を構成する個々の細胞は細胞膜で囲まれています。細胞膜は脂質二重層によりできており、この細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられています。脂質二重層はリン脂質分子が膜状に並んで作られます。リン脂質分子は親水性のリン酸部分と、疎水性の2個の脂肪酸が尻尾のように繋がった構造をしています。
細胞の内外は主に水で満たされているので、リン脂質分子は親水性のリン酸部分(頭部)を外側に、水に反発する疎水性の脂肪酸部分(尾部)を内側にして、3〜6ナノメートル(nm)程度の厚さの2重の層を作って並びます。(下図)。

図:リン脂質は親水性のリン酸部分(頭部)と、疎水性の脂肪酸部分(尾部)から構成される。疎水性の尾部は水によってはじかれ、互いに引き付けられて内側に並び、親水性の頭部の領域が水に接する外側に露出して膜状の二重層を形成する。この脂質二重層が細胞膜の基本構造になる。

細胞の内外を分ける細胞膜は脂質二重層を土台にして、その中にタンパク質粒子が浮遊するように移動しています。脂質二重層に浮かぶタンパク質粒子は、受容体や物質を通すチャネルなどとして働きます。

図:細胞膜は脂質の二重膜の海に、膜タンパク質が氷山のように頭を少し出して浮かんだような構造をしている。この構造モデルを流動モザイクモデル(fluid mosaic model)と呼んでいる 。

◉ 食べた脂肪酸が細胞膜に取り込まれる

食事から摂取された脂肪は代謝されてエネルギー源となり、また分解されて生成した脂肪酸は細胞膜などに取り込まれます。細胞膜の構成成分として使われる場合、その脂肪酸自体は変化せず、それぞれの構造や性質を保ったまま使われます。つまり、細胞膜をつくるとき脂肪酸の違いを区別せず、手当たり次第にあるものを使用するのです。
その結果、食事中の脂肪酸の種類によって細胞の性質も変わってきます。 さらに、その細胞膜の脂肪酸から作られるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの化学伝達物質の種類も違ってきて、炎症やアレルギー反応や発がんに影響することが明らかになっています。
例えば、リノール酸のようなオメガ6系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、血栓ができやすくなり、アレルギー反応を増悪させ、がんの発生率を高めます。オメガ6系不飽和脂肪酸を多く取り込んだがん細胞は増殖が早く転移をしやすくなります。  一方、魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)のようなオメガ3系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、炎症やアレルギーを抑え、血栓の形成や動脈硬化やがん細胞の発育を抑える作用があります
DHAやEPAを多く摂取するとがん細胞が抗がん剤で死にやすくなることも報告されています。その理由は、食事から摂取されたオメガ3系不飽和脂肪酸ががん細胞の細胞膜の脂質組成を変えることによって増殖シグナル伝達系に影響して増殖を抑えるからです。さらに、DHAが多く取り込まれるとフェロトーシスによる細胞死を促進することが報告されています。 人間を含め哺乳動物は体内でオメガ6とオメガ3の不飽和脂肪酸を合成できないので、食事から取り入れています。つまり、体内で作ることができないので、食事の変更による生体機能の変更を行うときの重要なターゲットになります。食事中の脂肪酸の種類によるがん細胞への影響の違いを知ることは、がんを抑える食事療法の実践において、極めて重要です。

◉ ドコサヘキサエン酸はがん細胞のフェロトーシスを促進する

がん細胞は細胞分裂をして細胞数を増やすために、細胞膜に使う脂肪酸の合成が亢進しています。さらに、がん細胞は自分で作った脂肪酸以外に、食事から摂取して血液中に存在する脂肪酸を積極的に取り込んで、細胞膜の合成に使います。
食事からのDHAやEPAの摂取を増やすと、がん細胞の細胞膜にDHAやEPAが多く取り込まれます。  DHAは二重結合が6個存在する多価不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸は酸化されて過酸化脂質になります。DHAは酸化されやすいので、鉄を多く含み活性酸素の産生が増加しているがん細胞では、DHAは過酸化脂質を増やし、細胞膜の酸化傷害を増強します。つまり、DHAを多く取り込んだがん細胞はフェロトーシスが起こりやすくなるのです。したがって、食事からのDHAの摂取を増やすと、放射線や抗がん剤による細胞死を起こしやすくなります。 抗がん剤や放射線に対するがん細胞のDHA誘発性の感受性増加は、抗酸化物質であるα-トコフェロールを添加することによって用量依存的に阻止されました。これはDHAの抗腫瘍効果が酸化傷害と関連することを意味します。6つの二重結合を持つDHAは最も過酸化性の高い脂肪酸の1つであり、細胞膜にDHAが多く取り込まれると、抗がん剤によって誘発される細胞膜の脂質過酸化を増強して、フェロトーシスを促進します。(下図)

図:食事(①)からのドコサヘキサエン酸(DHA)は細胞膜に取り込まれる(②)。DHAは酸化を受けやすいので、細胞内で活性酸素の産生が高まると(③)、脂質の過酸化によって細胞は酸化傷害を受け(④)、細胞膜が破綻してフェロトーシスで死滅する(⑤)。抗がん剤と放射線照射はがん細胞にフェロトーシスを誘導する(⑥)。食事からのDHAの摂取量を増やすと、がん細胞のフェロトーシスを増強できる。星印は活性酸素による脂質酸化を示す。DHAは酸化を受けやすいことを示している。

 

◉ なぜ微細藻類由来DHAが良いのか

魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は魚の体内で合成されているのではありません。EPAとDHAを作っているのは微細藻類です
プランクトンが微細藻類を食べ、小型魚がプランクトンを食べ、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖によって、サバやサンマやカツオやマグロなどの魚油にEPAやDHAが蓄積しています。人間はこれらの魚を食べることによってEPAやDHAを摂取しています。(下図)

図:オメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は微細藻類が合成している。プランクトンが微細藻類を食べ、小型魚がプランクトンを食べ、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖によって、魚油にEPAやDHAが蓄積している。

 

がんや認知症や循環器疾患の予防や治療にDHAやEPAが有効であることは確立しています。従って、DHAやEPAの多い脂の乗った魚を多く食べることが推奨されています。
しかし、魚のメチル水銀マイクロプラスチックなど海洋汚染に由来する有害物質の魚への蓄積の問題が、魚食を安易に推奨できないレベルまで深刻になっています。特に魚のメチル水銀汚染が重要な懸念になっています。
メチル水銀は毒性が強く、血液により脳に運ばれ、やがて人体に著しい障害を与えます。また、母親が妊娠中にメチル水銀を体内に取り込んだことにより、胎児の脳に障害を与えることもあります

魚は自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。魚摂取が増えるとメチル水銀の体内摂取が増え、胎児の脳の発育に悪影響を及ぼすことが明らかになり、厚生労働省は平成15年(2003年)に妊婦の魚摂取に関する注意事項を公表しています。米国食品医薬品局は、マグロなどの大型魚に水銀濃度が高い例をあげ、妊婦や子供は食べないようにと呼びかけています。
つまり、妊婦や小児は魚は多く食べてはいけない食品になっています

そこで、海洋でDHAとEPAを作っている微細藻類を培養して、培養した微細藻類からDHAとEPAを取り出せば、汚染物質がフリーのDHA/EPAを製造できます。 微細藻類の中でもDHA含有量が極めて多いシゾキトリウム(Schizochytrium sp.)をタンク培養して高濃度のDHAを含有するオイルを製造できます。
閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。藻類由来なので菜食主義の方も安心して摂取できます。(下図)

図:α-リノレン酸(①)は亜麻の種子や荏胡麻(エゴマ)の種子など植物油に含まれる(②)。エイコサペンタエン酸(③)とドコサヘキサエン酸(④)は微細藻類(⑤)や魚類(⑥)に多く含まれるが植物油には含まれない。α-リノレン酸を摂取すると一部はエイコサペンタエン酸に変換される(⑦)。しかしドコサヘキサエン酸への変換は極めて少ない(⑧)。したがって、完全菜食主義の人はドコサヘキサエン酸が不足しやすい。


微細藻類由来ドコサヘキサエン酸:DHA-51

脳や心臓や網膜の健康維持に必要なドコサヘキサエン酸(DHA)を51%と高濃度に含むオイルです。 DHAは食品ではサバやイワシやサンマなどの青魚などに多く含まれていますが、人間の体内ではほとんど合成できないので、現代人に不足しがちな栄養素です。
微細藻類の中でもDHA含有量が極めて多いシゾキトリウム(Schizochytrium sp.)をタンク培養して製造しています。閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。 微細藻類由来ですので、菜食主義(ベジタリアン、ヴィーガン)の方も使用できます。

商品名: DHA-51
商品の特徴: ドコサヘキサエン酸(DHA)を51%含有
微細藻類(シゾキトリウム)由来オイル
オメガ3:オメガ6の比率は30以上(原材料からの推定)
名称: 食用油脂
原材料名: シゾキトリウム精製オイル (フランス製造)、ひまわり油、中鎖脂肪酸油、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)  
価格/内容量: 14000円 / 270g
保存方法: 常温、暗所保存 開栓後は冷蔵庫保存
販売者: 有限会社福田コーポレーション     
〒104-0061 東京都中央区銀座5-14-9
電話番号: 03-5550-3552
製造者: ミントハウス株式会社
〒340-0835 埼玉県八潮市浮塚789
栄養成分表示
(100g当たり)
エネルギー 900 kcal、たんぱく質  0g 、脂質 100g、 炭水化物  0g、
ナトリウム 0g、 ドコサヘキサエン酸 51g
お召し上がり方 栄養補助食品として、1日当たり2gから10gを数回に分けてお召し上がりください。
サラダやジュースやスープなど食材や料理に加えてご使用下さい。
そのまま飲用することもできます。
酸化しやすいので、この油で揚げたり炒めたりしないでください。
温かい料理や飲み物に加えるのは問題ありません。
はじめてご使用の場合は、小さじ1杯程度から徐々に増やすようにして下さい。
冷暗所に保存し、開栓後は冷蔵庫に保管し、なるべく早くご使用ください。

購入ご希望の方はe-mail(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)でお問い合わせください。

◉ 原料の製造元について:

使用した原料はDHA ORIGINS-510というフランスのファーメンタルグ(Fermentalg)社が開発した微細藻類(シゾキトリウム)由来の高濃度なDHAです。
Fermentalg社は2009年設立の藻類培養ベンチャー企業で、Euronext Parisに上場してます。 藻類の高効率・高品質なタンク培養の高度な技術をもった会社です。 2500種を超える藻類のストックを保有し、遺伝子組み換えを用いずに、生産効率の高い原料藻類を選定しています。
培養から抽出、精製まで欧州で行いトレーサビリティを確保しています。 閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。

DHA-51の材料はシゾキトリウム製精油が74〜78%、高オレイン酸ひまわり油が21〜25%、中鎖脂肪酸が0.75%以下、抗酸化剤(ビタミンCとE)です。
ひまわり油には高リノール酸タイプと高オレイン酸タイプの2種類があります。 この製品に使用されているのは高オレイン酸タイプのひまわり油です。 高オレイン酸タイプのひまわり油は一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が80%、オメガ6は6.5%程度です。 オレイン酸はオリーブ油のメインの脂肪酸です。 高オレイン酸タイプのひまわり油はオリーブオイルよりも一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が多く、オメガ6が少ないという特徴があります
高オレイン酸ひまわり油の含有量が25%で、そのうちのオメガ6が6.5%とするとオメガ6がこのオイル全体の1.6%程度となります。 DHAが51%でオメガ6が1.6%なので、オメガ3:オメガ6の比率は31になります。 つまり、このオイルはオメガ3がオメガ6の30倍以上含まれ、さらにオレイン酸が20%近く含まれています。 魚油(DHA/EPA)とオリーブオイル(オレイン酸が豊富)の相乗効果が地中海料理の健康作用の理由の一つであることは良く知られています。 DHAだけでは不安定になるので、抗酸化物質とオレイン酸の豊富な高オレイン酸タイプのひまわり油が20%程度加えられています。DHAを安定化する効果もあります。


 DHA-51に関するご質問やお問い合わせは、メール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)でご連絡ください。