スペルミジン(Spermidine)の老化抑制と寿命延長効果

スペルミジンは全ての動物やヒトの細胞内で成長期に盛んに合成されます。 核酸やタンパク質の合成促進作用 、抗炎症作用に基く動脈硬化抑制作用、発毛促進作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用など様々な機能を合わせ持っています。寿命を延ばす効果もあります。
スペルミジンの体内での合成量は加齢とともに減少します
。これが老化に伴う諸臓器機能の低下の原因の一つになっています。したがって、 スペルミジンをサプリメントとして補うと、様々な老化性疾患の発症を遅延し、寿命を延ばす効果が期待できます
◉ スペルミジン高含有小麦胚芽エキス: 10,000円/60g(税込み)
スペルミジンを1%含有する小麦胚芽エキスです。 1gに10mgのスペルミジンを含有します。1日に1〜3g程度を服用します。
当院で使用しているスペルミジン高含有小麦胚芽エキスは中国製です。 純度は99%以上で、重金属の検査もパスしています。  Certificate of Analysisはこちらへ:  

◉ スペルミジン98%: 40,000円/10g(税込み)
スペルミジン98%以上の製品です。実際は99%以上です。
1日に0.1g〜0.2g程度を服用します。1日0.1gで100日分です。水や飲料に溶かして服用します。
 Certificate of Analysisはこちらへ:  

スペルミジンのサプリメントに関するご質問やご購入に関してはメール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)かファックス(03-3541-7577)でお問合せ下さい。

図:スペルミジン(Spermidine)を1%含有する小麦胚芽エキスの精製法。
小麦の実は胚乳、外皮、胚芽に分けられる。胚乳はデンプンとタンパク質を含み、外皮(小麦ふすま)は食物繊維を多く含む。胚芽には脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、抗酸化成分など多くの栄養成分を含む。 小麦胚芽をエタノール/水で抽出してスペルミジンを濃縮して、スペルミジンを1%含有する小麦胚芽エキスを作成。

【スペルミジンはポリアミンの一種】

ポリアミンは2つ以上のアミノ基(-NH2)を持つ物質で体内でアミノ酸から合成されます。 炭化水素基とアミノ基が結合した化合物はアミンと呼ばれます。 ポリ(poly)は複数を意味する接頭語で、ポリアミンというのは複数(2つ以上)のアミノ基を有する炭化水素です。体内には20種類以上のポリアミンが存在しますが、代表的なポリアミンとして スペルミジン,スペルミン,プトレスシンが挙げられます。

ポリアミンはすべての動物やヒトの細胞内で,成長期に盛んに合成されます。 核酸やタンパク質の合成促進作用 、抗炎症作用に基く動脈硬化抑制作用、発毛促進作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用など様々な機能を合わせ持っています。
ポリアミンは細胞内でアミノ酸であるアルギニンから合成されます。アルギニンはアルギナーゼの作用でオルニチンになり、オルニチン・デカルボキシラーゼ(ODC) の働きでプトレスシンに変化します。さらに、プトレスシンはスペルミジンシンター ゼによってスペルミジンに変換されます。最後にスペルミジンは、スペルミンシン ターゼによってスペルミンに合成されます。(図)

 

【スペルミジンは寿命を延ばす】

スペルミジンは全ての生き物に存在します。したがって、毎日の食事からスペルミジンを摂取しています。スペルミジンは鳥のレバーや納豆、キノコ類やチーズや果物のドリアンなどに多く含まれています。
゙これらの食品を摂取していても、加齢に伴い体内の ポリアミン含量は低下していきます。 体内での合成量が加齢とともに低下するからです。
スペルミジンの補給は、線虫、ショウジョウバエ、およびマウスの寿命を促進することが示されています。人間でもスペルミジンの摂取量が多いと寿命が延びることが報告されています。 以下のような報告があります。

Higher spermidine intake is linked to lower mortality: a prospective population-based study.(スペルミジン摂取量の増加は死亡率の低下に関連している:人口ベースの前向き研究)Am J Clin Nutr. 2018 Aug 1;108(2):371-380.

【要旨の抜粋】
背景: いくつかの動物モデルにおいて、スペルミジンの投与が生存率を増加することが示されている。
目的: 食事中のスペルミジン含有量とヒトの死亡率との間の潜在的な関連性を検討した。
方法: この住民参加の前向きコホート研究には、45〜84歳の829人の参加者が含まれ、その49.9%が男性であった。食事は、1995年、2000年、2005年、および2010年に栄養士が実施した食物摂取頻度アンケート(2540項目の評価)を繰り返して評価された。1995年から2015年までの追跡調査中に、341人が死亡した。
結果: すべての原因による死亡率(1000人年あたりの死亡数)は、スペルミジン摂取量が少ない下位3分の1の群が40.5(95%信頼区間:36.1〜44.7)、中央の3分の1の群が23.7(95%信頼区間:20.0〜27.0)、摂取量の多い上位3分の1の群が15.1(95%区間:12.6〜17.8)であった。
年齢、性別、およびカロリー摂取量を調整した20年間の累積死亡率はスペルミジン摂取量が少ない下位3分の1の群が0.48(95%信頼区間:0.45〜0.51)、中間の群が0.41(95%信頼区間:0.38〜0.45)、摂取量の多い上位3分の1の群が0.38(95%信頼区間:0.34〜0.41)であった。
スペルミジン摂取量が平均から1-SD(標準偏差)の増加当たりの、年齢、性別、カロリー比を調整した全死因死亡のハザード比は0.74(95%信頼区間:0.66〜0.83; P <0.001)であった。
スペルミジン摂取量の上位3分の1と下位3分の1の群の間の死亡リスクの差は、5.7歳(95%信頼区間:3.6〜8.1歳)の年齢差に相当するものであった

結論: 私たちの調査結果は、スペルミジンの豊富な食事が人間の寿命の延長に関連しているという仮説に疫学的な支持を与えている。

ポリアミンの合成には酵素が必要ですが、加齢に伴ってその酵素活性が低下するためポリアミンの合成能は低下します。 この論文の研究結果は、スペルミジンの摂取量が多いと、45歳以上の集団で、20年間の死亡率が半分以下になることを示唆しています。スペルミジンを多く摂取すると、5歳以上も延命する可能性を示唆しています。

【スペルミジンはテロメア短縮を抑制して寿命を延長する】

スペルミジンの抗老化作用のメカニズムとしてオートファジーの誘導が最も重要と考えられていますが、さらにテロメア短縮を抑制して寿命を延長するメカニズムも報告されています。以下のような報告があります。

Novel aspects of age-protection by spermidine supplementation are associated with preserved telomere length.(スペルミジン補給による年齢保護の新しい側面は、テロメア長の保持と関連している)Geroscience. 2021 Apr;43(2):673-690.

【要旨】
老化は、心不全、神経変性、代謝異常、テロメア短縮、脱毛など、分子的、細胞的、生理学的な機能低下を引き起こす。 興味深いことに、分子レベルでは、細胞のリサイクルおよび洗浄プロセスであるオートファジーを誘発する能力は、多くの生物において年齢とともに低下し、加齢に伴う老化現象の原因となっている。
ここでは、高齢のマウスに飲料水中の天然オートファジー誘導物質スペルミジンを6か月間投与するだけで、加齢性病変の発生を大幅に抑制できることを示す。これらには、脳のグルコース代謝の調節、明確な心臓の炎症パラメーターの抑制、腎臓と肝臓の病理学的異常の減少、および加齢による脱毛の減少が含まれる。
興味深いことに、スペルミジンを介した抗老化作用はテロメア短縮の抑制と関連しており、スペルミジン投与のアンチエイジング効果の背後にある新しい細胞メカニズムを支持している。

スペルミジンの抗老化作用の主なメカニズムはオートファジーの誘導ですが、テロメア短縮を抑制する効果もあるという報告です
細胞の中には細胞の分裂した回数をきちんと数える装置があって、ある回数を過ぎると細胞は分裂できなくなります。細胞の分裂回数に限界を設けているのがテロメアです。 染色体DNAの末端部分にはTTAGGGという配列が多数繰り返された構造がみつかりテロメアと名付けられました。この6塩基のリピート部分には遺伝情報が入っていないので、なくなっても遺伝子の発現には問題ない部分です。しかし、テロメアが無くなると細胞はDNAの複製ができなくなります
DNAは2本の鎖状で、それぞれの鎖を鋳型にして新しいDNA鎖を合成します。新しい鎖を作るとき、DNAポリメラーゼという酵素が鋳型のDNA上を移動しながら、新生DNAを作ります。この酵素が鋳型のDNAに結合するためには、まずプライマーとよばれるRNAが鋳型のDNAの末端に結合する必要があります。 DNAポリメラーゼはRNAプライマーに結合し、そこから新生DNAの合成を開始します。その際、プライマーが結合した鋳型DNAの末端部は複製されません。そのため、細胞分裂でDNAを複製するたびに、染色体のDNA末端は少しづつ切れて短くなっていきます
短くなっても問題ないように、最初から遺伝情報とは関係なく必要のないDNA配列(TTAGGGの繰り返し配列)がテロメアとして存在しているのです。 しかし、テロメアの長さに限界があるので、いずれはテロメアが無くなると、もはや細胞分裂ができなくなります。

図:染色体の末端にはテロメアという構造があり(①)、この部分のDNAはTTAGGGという配列が多数繰り返されている(②)。細胞分裂するたびに、このテロメア部分のDNAは短くなり(③)、テロメアが無くなった時点で、細胞はそれ以上に分裂することができなくなり、細胞死が誘導される(④)。

つまり、テロメアとは「命の回数券」のようなものであり、分裂する度に回数券を一枚づつちぎって使い、やがて使い切ってしまうと細胞の寿命がくるというわけです。 ちなみに生殖細胞や幹細胞(骨髄細胞や消化管粘膜上皮細胞のように細胞回転が早い細胞を供給している細胞)やがん細胞のように無限に分裂できる細胞もありますが、これはテロメアを延ばすことができるテロメラーゼという酵素が働いて、テロメアの長さを維持しているからです。
普通の細胞にはテロメラーゼ活性はほとんどありません。 抗老化の研究分野では、テロメラーゼの活性を高めて幹細胞の分裂能を高め、組織や臓器の老化による機能低下を抑制することを目的にした治療法が研究されています。 この論文の研究は、スペルミジンにテロメラーゼ活性を高めてテロメア短縮を阻止する効果を示唆しています。

【スペルミジンは認知機能を良くする】

スペルミジンが認知機能を良くすることが報告されています。以下のような報告があります。

Spermidine in dementia:Relation to age and memory performance(認知症におけるスペルミジン:年齢と記憶能力との関係)Wien Klin Wochenschr. 2020; 132(1): 42–46.

【要旨の抜粋】
スペルミジンがオートファジーによってアミロイドβプラークを溶解するプロセスを誘導する能力を持っていることが報告されている。 この報告は、年齢および記憶能力と血清スペルミジンレベルとの関連に焦点を当てている。 これは、記憶能力に対する経口スペルミジン補給の効果を検討している進行中の多施設プラセボ対照試験の前提となる。
記憶力テストは、オーストリアのシュタイアーマルク州の6つのナーシングホームで60〜96歳の80人の被験者に対して実施された。 スペルミジン濃度を測定するために血液サンプルを採取した。
結果は、スペルミジン濃度と記憶能力検査スコアの間に有意な相関関係があることを示した(p = 0.025)。 この結果に基づいて、スペルミジンは神経認知の変化(老人性痴呆またはアルツハイマー病)の診断のためのバイオマーカーとして適切である可能性があると結論付けることができる。   

つまり、血中スペルミジン濃度の低下は、記憶力の低下と相関するという結果です。したがって、サプリメントなどによるスペルミジンの補充は、記憶力や認知機能を向上させ、アルツハイマー病や認知症の治療に対する有効性が示唆されるということです。 そこで、この研究グループはスペルミジンをサプリメントで補う臨床試験を実施しています。

The positive effect of spermidine in older adults suffering from dementia.(認知症の高齢者におけるスペルミジンのプラスの効果)Wien Klin Wochenschr. 2021; 133(9): 484–491.

【要旨の抜粋】
現在の世界中の認知症の有病率は3,560万人と推定され、2050年までに1億1,500万人に増加する。したがって、十分に根拠のある認知症の診断と十分に研究された治療オプションが緊急に必要である。今までの研究で、スペルミジンがオートファジーによってアミロイドβプラークを溶解する重要なプロセスを引き起こす能力を持っていることが示されている。 さらに、天然のポリアミンのスペルミジンの投与が、老化したモデル生物の記憶力低下を防ぐことができることを示している。
この多施設二重盲検予備研究は、高齢者の認知能力に対するスペルミジンの経口補給の効果に焦点を当てた。 記憶力テストは、オーストリアのシュタイアーマルク州の6つのナーシングホームで60歳から96歳までの85人の被験者に対して実施された。スペルミジン濃度の測定と代謝パラメーターの測定のために血液サンプルを採取した。
結果は、より高いスペルミジン投与量で治療されたグループの軽度および中等度の認知症の被験者において、スペルミジンの摂取量と認知能力の改善との間に明確な相関関係があることが示された。 テストパフォーマンスの最も実質的な改善は、軽度の認知症の被験者のグループで見られ、ミニメンタルステート検査(MMSE)で2.23ポイント(p = 0.026)、言語の流暢性で1.99(p = 0.47)増加した。比較すると、スペルミジン摂取量が少ないグループは、認知能力は変化なし、あるいは低下を示した。

スペルミジンはオートファジーを促進し、アミロイド・ベータ・プラークを分解するメカニズムによって認知症や アルツハイマー病の進行を抑える可能性を報告しています
アルツハイマー病は老年性認知症の原因としては最も頻度が高い神経変性疾患です。 アルツハイマー病の脳の病理所見で最も特徴的なのが「老人班」です。この老人班はアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積から構成されています。
Aβはアミロイド前駆体たんぱく質(APP)から酵素(βおよびγセクレターゼ)によって切断されて産生される38〜43アミノ酸からなるペプチドです。 脳内のAβの濃度はAβの産生と除去(クリアランス)のバランスによって決定され、そのバランスが破綻することによって脳内Aβが増加し、Aβの蓄積・凝集によって神経細胞障害が引き起こされ、最終的にアルツハイマー病が発症します。 アルツハイマー病では脳組織内にアミロイドβたんぱく質の凝集塊が蓄積することによって神経細胞内で炎症反応が起こって、細胞死が引き起こされます。
この論文では、スペルミジンの補充は、オートファジーを促進するメカニズムで、アミロイドβプラークの除去を促進し、アルツハイマー病の発症や進行の防止に有用である可能性があると考察しています。    
つまり、スペルミジンをサプリメントで補充することは、認知症を予防し、寿命を延長する効果が期待できるということです。
また、スペルミジンには、育毛効果や、毛や爪のツヤを高める効果、免疫力を高める効果、心臓を保護する効果など多彩な健康作用があります。

 

スペルミジンはオートファジーを亢進して細胞を若返らせる

【細胞は自分のタンパク質を分解して若返りを行なっている】

細胞内のタンパク質は絶えず分解して新しいタンパク質と入れ替わっています。古くなったタンパク質を分解して新しいタンパク質を合成することによって、細胞成分の若返りを行なっています。このタンパク質の若返りに重要な役割を担っているのがオートファジーという現象です。  
オートファジー(Autophagy)という用語はギリシャ語の「自分」(オート;auto)と「食べる」(ファジー:phagy)を組み合わせた用語で、文字通り「自分を食べる」という意味を持ちます。日本語では「自食作用」と訳されています。  
オートファジーは細胞内の一部を少しづつ分解する細胞内のリサイクルのようなものです。例えば、私たちは食事から1日50~100グラム程度のタンパク質を食べています。一方、私たちの体内では、1日に200グラム程度の自分のタンパク質をアミノ酸に分解し、それに相当するタンパク質を合成しています。つまり、口から食べているタンパク質より、ずっと多い量の自分のタンパク質を食べているのです(図)。

図:体内ではオートファジーによって1日に200グラム程度の自分のタンパク質をアミノ酸に分解し、それに相当するタンパク質を合成することによって、細胞内のタンパク質の若返りを行っている。

【細胞が栄養飢餓になるとオートファジーが亢進する】

定期的な断食(絶食)や継続的なカロリー制限を行うと体が若返ります。その理由は、断食やカロリー制限をするとオートファジーが亢進して、細胞が若返るからです
食事からの摂取カロリーを減らすことを「カロリー制限」と言います。食事中のビタミンやミネラルやタンパク質などの栄養素の不足を起こさずに摂取カロリーだけを30~40%程度減らす食事です。このカロリー制限は酵母から線虫、ハエ、マウス、霊長類に至る数多くの生物種において、老化を遅延して寿命を延ばし老化関連疾患の発症を遅らせる最も再現性の高い方法であることが、多くの研究で証明されています。  
30~40%のカロリー制限というのは軽度から中等度の飢餓状態であり、それに対して生体は様々な適応応答を行うために、代謝や防御機能に関与する遺伝子の発現レベルでの変化が生じます。
その一つがオートファジーの亢進です。  
オートファジーは細胞内タンパクや小器官を二重の脂質膜で包み込み、これをリソソームに輸送して分解する仕組みです。細胞が飢餓条件下におかれると、細胞質に隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が現れます。その後、膜は細胞質内の異常タンパク質や細胞内小器官を取り込みながら伸長し、先端どうしが融合して、オートファゴソームが形成されます。 オートファゴソームがリソソームと融合して内包物は分解されます。自己消化で得られたアミノ酸は栄養源として再利用されます(図)。

図:細胞質に隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が現れ、異常なタンパク質や細胞内小器官を取り込む(①)。その後、膜は細胞質を取り込みながら伸長し(②)、先端どうしが融合して、オートファゴソームが形成される(③)。 オートファゴソーム内にはミトコンドリアなどの大きな細部内器官も含まれる。オートファゴソームがリソソームと融合すると(④)、内包物は分解される(⑤)。自己消化で得られたアミノ酸や脂肪酸や核酸は細胞内の物質合成に再利用される(⑥)。(参考:Nature Cell Biology,9, 1102-1109, 2007 )

細胞は栄養飢餓に陥るとオートファジーにより細胞質内のタンパク質や小器官(ミトコンドリアや小胞体など)の一部を分解および再利用し、細胞の生存に必要なエネルギーやアミノ酸を得ています。  さらに、オートファジーを使い老廃物や損傷したミトコンドリア、病原体、異常タンパク質を除去しており、それにより神経変性疾患、がん、糖尿病、心不全、各種の炎症や感染症など、さまざまな疾患の発症を抑制していることが明らかになっています。
つまり、オートファジーは細胞内の老化した成分を除去して細胞を若返らせる作用があります。断食が細胞を若返らせるメカニズムもオートファジーの亢進が重要です。  オートファジーの機序でミトコンドリアを分解することをミトファジーと言います。カロリー制限や絶食はミトファジーを亢進して異常なミトコンドリアの除去を亢進します。
 オートファジーが抑制されると腫瘍が発生しやすくなります。これは、細胞内に異常タンパク質や不良ミトコンドリアが蓄積することが引き金になると考えられています。

【栄養過多はmTORC1を活性化してオートファジーを抑制する】

ラパマイシン(Rapamycin)は臓器移植の際の拒絶反応を防ぐために使用される薬ですが、このラパマイシンに寿命延長効果と抗がん作用が明らかになったことから、ラパマイシンの生体内のターゲット分子である哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin)、略してmTOR(エムトール)という蛋白質が注目されています。
mTORはラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼ(タンパク質のセリンやスレオニンをリン酸化する酵素)で、細胞の分裂や生存などの調節に中心的な役割を果たすと考えられています。
  初め、酵母におけるラパマイシンの標的タンパク質が見出されてTOR(target of rapamycin)と命名され、後に哺乳類のホモログ(相同体)が見出されてmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)と命名されました。


  
mTORにはmTOR複合体1((mammalian target of rapamycin complex 1:mTORC1)mTOR複合体2(mammalian target of rapamycin complex 2:mTOR2)の2種類があります。 mTORに幾つかの他のタンパク質が結合して複合体を形成しますが、結合しているタンパク質の違いで2種類の複合体ができ、異なる機能を担っています。
mTORC1は成長因子や、グルコースやアミノ酸などを含む栄養素のセンサーとして機能し、mTORC2は細胞骨格やシグナル伝達の制御をしています。インスリンやインスリン様成長因子やアミノ酸(特にロイシン)によって活性化されるのはmTORC1の方です。ラパマイシンで阻害されるのもmTORC1の方です。 
  
mTORC1は、グルコースやアミノ酸などの栄養素の状況、エネルギー状態、成長因子(増殖因子)などによる情報を統合し、エネルギー産生や細胞分裂や生存などを調節しています。  細胞の増殖というのは、栄養とエネルギーが利用できる状態にあるときに、新たな細胞構成成分(タンパク質、核酸、脂質など)を合成して、細胞の数を増やす生化学的プロセスのことです。したがって、増殖するためには細胞を新たに作る材料(栄養素)とエネルギー(糖質や脂質を分解して得られるATP)が必要です。増殖因子や成長因子やホルモンなどによって細胞増殖の指令(シグナル)が来たときに、栄養素とエネルギーの供給が十分にあることを判断し、タンパク質や脂質の合成を促進して細胞増殖を実行するスイッチを入れるのがmTORC1です。

図:哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)は複数のタンパク質から構成されるセリン・スレオニン・リン酸化酵素で、インスリンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)や上皮成長因子(EGF)や血小板由来増殖因子(PDGF)などの増殖因子によって活性化される(①)。mTORC1はタンパク質翻訳の開始因子であるelF4Eを抑制する4E結合タンパク質(4E-BP1)をリン酸化してその機能を抑制する(②)。また、リボソームの生合成を促進するS6K1をリン酸化して活性化する(③)。これらの作用によってmTORC1はタンパク質合成を促進する(④)。その他、多くの標的タンパク質をリン酸化することによって脂質や核酸の合成を亢進し(⑤)、細胞内小器官の消化・再利用に重要なオートファジーを抑制する(⑥)。 

【糖質摂取を減らせば細胞や組織が若返る】

前述のようにmTORC1が活性化するとオートファジーは抑制されます。インスリンはmTORC1を活性化するので、糖質の多い食事はインスリンとmTORC1と介してオートファジーを抑制することになります。    
オートファジーが抑制されると悪性腫瘍が発生しやすくなります。これは、細胞内に異常タンパク質や不良ミトコンドリアが蓄積することが引き金になると考えられています。また、オートファジーの抑制は、古くなった細胞内のタンパク質や小器官の分解を阻害するので、細胞の老化を促進します。  
つまり、インスリンやインスリン様成長因子-1によってmTORC1が活性化されることは体の成長促進や筋肉増強には効果があるのですが、オートファジーの抑制や酸化ストレスの亢進によって細胞の老化とがん化を促進することになります(図)。

図: mTORC1(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1)は細胞のがん化と老化の両方に関与している。栄養素(グルコースやアミノ酸など)、インスリン、インスリン様成長因子-1、その他の増殖因子はmTORC1シグナル伝達系を活性化し、細胞の成長や細胞周期(細胞分裂した細胞が再び分裂を起こすまでの過程)の進行を促進する。オートファジーは細胞内をきれいにして細胞を若返らせる効果があるが、mTORC1の活性化はオートファジーを阻害して老化とがん化を促進する。

線虫の研究では、カロリーを制限しなくても、カロリー摂取で応答するインスリンの信号伝達系に欠陥がある変異体は普通にエサを食べていても長生きすることが明らかになっています。  インスリンはオートファジーの抑制因子であり、インスリン信号伝達に異常があるとやはりオートファジーが亢進するのです
このようにがん予防と寿命延長とインスリンシグナル伝達系とオートファジーは密接に関連しています。    いろんな成長因子や栄養素(グルコースやアミノ酸など)は成長過程においてはmTORC1の働きによって体が成長し成熟していく上で重要な働きを担っていますが、成熟が済むと、成長ホルモンや成長因子やmTORC1の活性化は細胞や組織の老化を促進する作用になり、さらにがん細胞の発生や増殖や進展を促進することに加担しています。
一時的飢餓あるいは軽度の飢餓はオートファジー亢進を通じて細胞内をきれいにして、細胞を若返らせる効果があり、さらにがんを予防することもできます。カロリー制限は完全な絶食ではなく、普通の食事の60%から70%程度のカロリーに抑えるのですが、この程度の弱い飢餓でもオートファジーが誘導されます。  
絶食やカロリー制限を実践すると体の若返りに有効ですが、空腹感という苦痛が伴います。そこで、オートファジーを誘導する医薬品やサプリメントや食品成分の利用が検討されています。そのような効果がある食品成分としてスペルミジンが有名です。スペルミジンはポリアミンの一種で、小麦胚芽や納豆やチーズなどに多く含まれます。最近は抗老化のサプリメントとしても注目されています。

【スペルミジンはオートファジーを促進して心臓を若返らせる】

老化に伴い心臓の機能も低下します。誰でも年をとると心臓の拡張する(拡がる)力が低下します。老化に伴い心不全発症リスクが上昇します。心臓の老化の終末像は心不全です。心不全とは、色々な原因で心臓の動きが悪くなった状態で、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、進行すると死につながります。日本人の死因は、がんが一番ですが、75才以上に限ると心臓病で亡くなる方の人の方が多くなります。
老化した心臓は、若年個体の心臓と比較して心筋細胞が肥大傾向を示し、心筋細胞数が減少することが知られています。  心血管系の老化のプロセスを促進する分子として、活性酸素種が中心的役割を担うと考えられています。ミトコンドリアの電子伝達系により産生される過剰な活性酸素によりミトコンドリア機能不全や DNA 損傷、細胞死、慢性炎症,遺伝子発現プロファイルの変容が生じ、心筋症を発症するリスクが高まります。  オートファジーはタンパク質を分解して細胞内で再利用するリサイクル・システムとして重要です。一般に、
加齢に伴いオートファシー反応が低下します。老化した心臓においてもオートファジー反応の低下が生じ、機能不全ミトコンドリアが効率的に除去されなくなります。機能不全のミトコンドリアは活性酸素の産生を増やすことで組織の酸化傷害が亢進し、心筋組織リモデリングが進行することになります。
スペルミジンはオートファジーを促進することが明らかになっています。 スペルミジンの外来性補給は、マウスを含むさまざまなモデル生物の加齢および加齢性疾患にさまざまな有益な効果を発揮します。
たとえば、スペルミジンの摂食は寿命を延ばし、心臓と神経を保護し、抗腫瘍性免疫応答を刺激し、メモリーT細胞形成を刺激することで免疫老化を回避する効果があります。  
これらの老化防止効果の多くは、オートファジーの活性化を通じてタンパク質恒常性を確保するスペルミジンの能力と関連があると考えられています。スペルミジンは、オートファジーの主要な負の調節因子の1つであるEP300を含むいくつかのアセチルトランスフェラーゼの阻害を通じてオートファジーを誘発します。  オートファジーを起こしにくくする遺伝子改変は、寿命に対するスペルミジンの有益な効果を無効にします。これはスペルミジンの寿命延長効果がオートファジーの活性化が関与していることを意味します。 以下のような報告があります。

Cardioprotection and lifespan extension by the natural polyamine spermidine.(天然ポリアミンスペルミジンによる心臓保護と寿命延長)Nat Med. 2016 Dec; 22(12): 1428–1438.

マウスを使った実験で、スペルミジンの投与は、心臓のオートファジー、マイトファジー、およびミトコンドリアの呼吸を強化し、心筋細胞の機械的弾性特性を改善することを報告しています。心臓機能の改善効果はオートファジーが起こらないように遺伝子改変したマウスでは認められなかったので、オートファジーの活性化がスペルミジンによる心臓機能の活性化に必須であることを明らかにしています。

【体内のスペルミジン量は加齢とともに減少する】

 スペルミジンは動物や植物や微生物などほとんどの生き物に存在するので、私たちは食事からスペルミジンを摂取しています。鳥のレバーや納豆、キノコ類、チーズ、小麦胚芽などに多く含まれます。スペルミジンは大豆に多く含まれ、大豆を発酵して作る納豆や味噌や醤油にはさらに含有量が高くなっています。
私たちは、1日に平均10mgから20mg程度のスペルミジンを食事から摂取していますが、食事の内容によって食事から摂取するスペルミジンの量は大きな個人差があります。
胎児や新生児の細胞ではスペルミジンを含めポリアミンの合成能力が高く、細胞の増殖能も高くなっています。また,ポリアミンは母乳にも多く含まれている事がわかっています。
 しかし、加齢とともにポリアミンの体内産生量は減少します。年齢を重ねるごとにスペルミジンやスペルミンを合成する酵素の量や活性が低下するためです。したがって、高齢者がポリアミンの原料であるアルギニンやオルニチンをサプリメントとして摂取してもスペルミンやスペルミジンの合成量や体内量が増加するわけではありません。したがって、スペルミンやスペルミジンは高齢 者では不足する傾向にあります。これが、スペルミジンを多く含む食品やサプリメントを摂取するメリットの理由です。 

サプリメントや食事から、スペルミジンを1日に100mg程度摂取すると、認知症や心臓疾患の発症を予防し、寿命を延ばす効果が期待できます。髪の毛や爪の成長促進や艶を高めるので、美容にも有効です。スペルミジンに育毛効果があることが臨床試験で明らかになっています。以下の様な報告があります。

A spermidine-based nutritional supplement prolongs the anagen phase of hair follicles in humans: a randomized, placebo-controlled, double-blind study(スペルミジンベースの栄養補助食品は、ヒトの毛包の成長期を延長する:無作為化プラセボ対照二重盲検試験)Dermatol Pract Concept. 2017 Oct; 7(4): 17–21.

この研究では、スペルミジンのサプリメントによる補給が、毛包の成長期を延長して育毛効果を発揮することをランダム化比較試験で示しています。
 60歳以上を過ぎて体の老化を実感する症状として最も多いのが、頭髪が薄くなることです。スペルミジンを多く摂取すると、老化による薄毛を予防でき、さらに毛髪を増やすことができます。つまり、体の若返りは可能であり、スペルミジンを多く摂取することは若返りに有効です。

図:スペルミジンは育毛効果がある

【スペルミジンの体内吸収性は高い】

胃や腸から体内に吸収される物質の分子量は、最大でも 1000 以下程度 とされています。ポリアミンは 250 以下なので、低分子のアミノ酸などと同様に腸 管から効率よく吸収され、そのまま血中に移行して生体内で効率良く利用されると 考えられています。
スペルミジンやスペルミンを分解する酵素は腸内にはありません。しかし、プト レスシンを分解してしまう酵素 (Diamine Oxidase) は腸内に存在するので、食物に含まれているプトレスシンは酵素による分解が進み、消化管からの吸収量は低下し ます。 一方、スペルミジンは消化管に分解酵素が存在しないため、大部分がそのままの形で腸管から吸収され、全身 の組織や臓器に分布される事がわかっています。 したがって,スペルミジンの含有量が高い小麦胚芽エキスは、非常に優れたサプリメントと言えます。

【スペルミジン高含有量の小麦胚芽エキスを用いた抗老化治療】

スペルミジンは全ての動物やヒトの細胞内で成長期に盛んに合成されます。 核酸やタンパク質の合成促進作用 、抗炎症作用に基く動脈硬化抑制作用、発毛促進作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用など様々な機能を合わせ持っています。寿命を延ばす効果もあります。
スペルミジンの体内での合成量は加齢とともに減少します。これが老化に伴う諸臓器機能の低下の原因の一つになっています。
スペルミジンの前駆物質のアルギニンやオルニチンを摂取しても、これらの物質からスペルミジンを合成する酵素が加齢とともに減少するので、スペルミジン自体を補うのが最も効果があります。
スペルミジンをサプリメントとして補うと、様々な老化性疾患の発症を遅延し、寿命を延ばす効果が期待できます

当院ではスペルミジンを1%含有する小麦胚芽エキスと98%スペルミジンを抗老化治療に使用しています。

◉ スペルミジン高含有小麦胚芽エキス: 10,000円/60g(税込み)

このスペルミジン高含有小麦胚芽エキスは1gに10mgのスペルミジンを含有します。
1日に1〜3g程度を服用します。
当院で使用しているスペルミジン高含有小麦胚芽エキスは中国製です。 純度は99%以上で、重金属の検査もパスしています。  Certificate of Analysisはこちらへ:  

◉ スペルミジン98%: 40,000円/10g(税込み)

スペルミジン98%以上の製品です。実際は99%以上です。 1日に0.1g〜0.2g程度を服用します。1日0.1gで100日分です。水や飲料に溶かして服用します。  Certificate of Analysisはこちらへ:  

スペルミジンのサプリメントに関するご質問やご購入に関してはメール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)かファックス(03-3541-7577)でお問合せ下さい。